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古くはないが、新しくもない、テリオドス領の自分の家とは比べられないくらいではあるけれど、数室しか部屋のないこじんまりとした屋敷だ。
草原にポツンと建つには豪華にも見えるが、それでも王城を見慣れている自分にとっては、何かあったのかと勘ぐってしまうほどのコンパクトさだった。
聖シルル王国の国王として君臨した人が、ここで満足できるのだろうか……と、思わず邪な考えが過ぎる。
「ミロク様のご趣味でございます」
耳元で突然聞こえた声に思わず「ひっ」と声を上げてしまった。
慌てた風に振り返ったクラドが、ロニフを見て眉尻を下げる。
「母上、はるひは気配を読めません」
「存じております、驚かせてしまい、申し訳ございません」
どきどきする胸を押さえながら「いえ」と答えて、もう一度建物を見上げた。
味のある、
そう、そう表現したらしっくりくるんだと納得して頷くと、オレの視線を辿るようにロニフも視線を動かす。
「故郷の光景に似ているのだそうです」
故郷……と口の中で呟く、そうだ、ミロクも男巫女だと言うのならばオレと同じように違う世界からこちらに来たことになる。
オレはかすが兄さんと一緒に来たけれど、歴代の巫女たちはそのほとんどがたった一人で、戻ることのできないこの世界に突然放り込まれたはずで……
郷愁を感じない筈がない。
「そうですか」
故郷 は、どんな場所だったかな?
ビルがいっぱい建っていて、地面がコンクリートで、夜も明るくて……
それから?
自分の家が一戸建てだったことは覚えているけれど、細かい部分はもう曖昧だ。それと同じように両親の顔も朧気で、今のオレは故郷は?と問われるともうこの世界しか思い浮かばなかった。
ヒロが大きくなったら、どんな世界から来たか話してやりたい気持ちもあったけれど、その時までにどれだけ覚えていることができるのか。
「はるひ?」
名前を呼ばれて振り返ると、黒い耳を吹く風にぴくぴくと揺らしたクラドが不思議そうにこちらを見ている。
「なんでもないです」
首を振ってクラドの元に駆け寄ると、オレが追いつくのを待ってから歩き出す。
わいわいと低くドスの利いた男達の笑い声が聞こえ始め、そのうちの一人がこちらに気が付いたのかさっと手を振りながら駆け寄ってくる。
貴族 には見えない、作業で汚れたニッカポッカと、暖かくなっては来ているとは言えまだ肌寒いのに上はタンクトップ一枚だ。
無精髭とごま塩頭を見るとずいぶんと年上のようにも見えたけれど、その体は大工仕事を生業としているせいか隆々とした筋肉を誇っている。
「よーぉ!もう時間だったか!?」
先頭を行く陛下に片手を上げてそう言うと、首にかけたタオルで汗をぬぐいながらオレ達の方へと向き直る。
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