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2−4
現王であるクルオスとそっくりな青い瞳に見つめられてヒロは泣くんじゃないかとハラハラしていたが、幸いにして細い尻尾をピコピコと左右に振って見せる。
「この子だね。ああ、真っ白だ」
「はい」
ヒロと同じく白い髪と白い耳と尾を見ると、この子の将来を突き付けられた気がして息が詰まりそうな気分になるのは、まったく関係のなかった王位なんてものが降ってわいたからだ。
オレにしがみつきながらもきょとんとして視線を逸らさないヒロを見下ろし、陛下は小さく唇の端を上げて目を細める。
「物おじしない子だ」
「ありがとうございます」
そう返すもののこの後の会話を思いつかず、思わず助けを求めるようにクラドの方をちらりと見ると、オレの意を汲んだのか緩く頷く。
「生まれて半年になります、私ではなくはるひの性質を良く引いているようです」
「ああ、うん、話は聞いているよ」
おかしそうに笑いを含ませた声音でそう言うと、ふぃ と視線を逸らして窓の外を見る。
「随分と面白いことになっていたそうだね」
「いえ……それは 」
「クルオスから『明らかにクラドの子なのに狐の子だと言い張ってる』って手紙が届いてな」
そう言うと陛下は何かを思い出したかのように、ふ と吹き出して肩を揺らす。
クラドと顔を見合わせて……そんなことまで報告されていたのかと、顔が熱くなるのを止められなかった。
「煩わせまして、申し訳ありません」
「いや、うん。なかなか面白かったよ」
そう言ってから頷くと、「ちょうどいいタイミングだろう」と先程からちらちら見ていた窓の方へと顎をしゃくる。
その窓から見えるものは、ここに来る途中で見た建築中の建物で……
視線に倣ってまじまじとそちらを見ると、屋根に上っていた職人が梯子を下りたり、道具を簡単に片づけているのが目に入る。
今から休憩なのだろうか?と、クラドを見上げてもクラドもいまいちよくわからないと言うような顔だ。
「こちらにおいで」
そう言うと陛下は滑らかな動きで部屋を出て行く。
その動きは淀みがなく、息子とは言え客人に伺いを立てるようなものでは一切ない。
自分の動きに周りがすべて合わせてくれることに慣れた人間の動きだった。
お互いに視線で会話してみても陛下が立ち止まることはなく、クラドが小さく頷くのに促されてその後を追う。
寄木細工の廊下を進み、深い飴色の重厚な扉を押して外へ出ると、さっと視界が開けて緑の海原と、それと視界を二分する青い空が見えた。
それ以外には何もない、あまりにも牧歌的な光景だ。
こちらを振り返りもしないでスタスタと歩いていく陛下に従い、前国王が住んでいると言われても信じることのできない大きさの館を振り返る。
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