138 / 304

2−13

「只人は子を成せない」 「  ですが、はるひは私の伴侶ですっ」 「ヒロがお前の子であることは間違いないだろう、白い狼なのだから」  そう言うと陛下はまるで玩具に飽きた子供のようにふぃ とはるひから手を離し、やはり物憂げな瞳で頭を垂れたままの母に視線を移す。 「喜べ、ロニフ。お前の子が王族だと認められたぞ」 「はい、この身に余る栄誉でございます」 「だが、あの子がはるひの子だと証明されたわけではない」  ひどく平坦な声がそう告げて、驚きで固まってしまったはるひを見た後に、物言いたげに俺の方へと視線を投げかけてくる。  けれど、問いたいのは俺の方で…… 「はるひの子でなければ誰の子だと言うんですか!」 「それを尋ねている」  そう返す陛下の纏う雰囲気は、俺やはるひがここへ足を運んだ際の穏やかさは消えており、ひりつくような毛が逆立つような嫌な雰囲気だった。  陛下が言うことを鵜呑みにするならば、俺ははるひ以外に子供を産ませたことになるし、はるひはそれを取り上げて自分の子だと言い張っていると言うことになる。 「ゴトゥスに連れて行った隊に女がいたようだが、あれは『種の揺籠』ではないのか?」 「彼女は立派な騎士であり戦士です、そのような目的で連れて行ったのではありません!」 「そうか、では、もう一人、孕める者がいたな?」 「馬鹿な!」  目の前の人物が陛下の皮を被った未知の生き物に思えてくる程、その質問は想像を超えたものだった。 「巫女様ははるひの兄であり、クルオス陛下の番です!」  驚いたせいで声がひっくり返りそうなほど甲高く、みっともないほど掠れてしまう。 「随分と長い戦いだったな?お前の特性が強く出れば子は二月ほどで産まれるのだろう?そもそも出征前にはるひに子が出来たと証明できる者がいるのか?」 「  です が、抱いたのは出征前です」  胎に子が宿ったのだと、王宮医ではなくともせめて誰がしかの医者がそれを確認していたなら言い返すこともできたのだろうが、はるひは誰にも診せることなくテリオドス領へと行ってしまっていた。 「私ははるひがヒロに乳を含ませるのを見ています、小細工でどうとなるものではありません!それに  っ」  ぱしん と尾が鳴る。  兄とそっくりの牽制の仕方に思わず怯むと、力仕事を知らないかのような細い指先が俺を指す。 「お前が、かすがに恋慕していたと報告を受けている」 「で、でたらめですっ!」 「庭での逢引の件、ゴトゥスでの護衛に名乗りを上げた件、二人で同じ部屋に入って行くそうだな?それに体にも触れさせていたそうじゃないか?」 「な、な   何を言ってらっしゃるんですかっ!」

ともだちにシェアしよう!