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「  っ ミロク、やりすぎだ。耳が……」 「うるせぇ、今ので一掃できたはずだ。とっとと出て行け」  ふーふーと肩で荒く息をするミロクは力を使った名残なのか、弾ける小さな光を纏ってまさに神の使いのように見える。  かすが兄さんで何度も見ているはずなのに、ミロクのそれはまた雰囲気が違っていてまるで恐ろしいものにでも睨まれたかのような気分になって、ヒロを抱き締めたまま震えないためにゆっくり深く息を吐く。 「無茶はしてはいけないと言っただろうに。もう引退したのだし、私とゆっくり余生を過ごすんだろう?」 「その過ごす相手は俺じゃなくてもいいってこったろっ!ハーレムでも何でも作って引っ込んでろ!」  夜風を気にしてか陛下が労わるように自分のローブをミロクにかけるけれど、髪を逆立てたままのミロクは素気無くそれを払い落すと一瞥もせずにこちらへと歩いてくる。 「『とっととこうすればよかったな。立てるか?』」  仄かな白い光を纏う手を差し出されて一瞬取るか迷ったものの、先程の落雷のような音に驚きすぎて膝が笑ってしまっていた。 「あ、あ  ありがとうございます  」 「ちんたらしててすまんな、負担になるからあんま力は使うなって言われててよ。使わずに済むんならって日和っちまった」  がしがしと乱暴に頭を掻くと、有無を言わさない力強さでオレを引き摺り上げてヒロをあやし始める。  泣いているヒロをあやすミロクに「負担?」と返すと、先程まで怒っていたなんて姿を欠片も残さずに不思議そうにこちらを見て首を傾げてきた。 「力を使う負担については聞いてないのか?」 「……いえ」 「まぁもともと神さんの力を人間が使うんだから、何もない方がおかしい話だろ」  そんな話を聞いたことはなかったせいか、賛同も否定もできずに曖昧に頷く。  かすが兄さんからは、『巫女は神の力を溜める充電池のようなものだ』とは聞いていたが、体に及ぼす影響には一切触れなかった。  手足のように、呼吸をするように使う姿を見ているせいか負担があるなんて思いもしなくて…… 「あんまな、まぁ……自分は良くても、大事な奴らを悲しませんのも な」  その悲しまる の意味は……  もうそれが分からないほど子供じゃなくて、ミロクが言い淀んだ先にある最悪の事態を思い描くと、自然と血の気が下がる。 「そんなに、負担になるものなんですか?」 「あ、いや、そんな顔すんなよ。使うことに関しては寝れば治るんだから」  まずいことを言った とばかりに顔をしかめたミロクは、言葉を探しているようだったけれど良い言葉が見つからなかったのか眉尻を下げて「すまん」と零す。

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