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この村はかつてゴトゥス山脈にもっとも近い村として、俺の隊が世話になった村でもあった。
以前は瘴気の被害も多く寂れた雰囲気だったが、今日訪れてみてその活気に驚いた。
元々、その山脈から伸びる地層から価値のある鉱石が採れる場所ではあったが、鉱山仕事に瘴気にと命を落とす可能性が高すぎることから賑わうにはほど遠い状態だったのだが……
「 ……ずいぶんと変わったな」
この鼠獣人の開いているこの食料品店も、以前来た時は露天に近いような雰囲気だったと記憶している。
「以前に来られたことが?」
干した肉の数を数えながら視線を動かさずに尋ねかけられて頷く。
「巫女様がゴトゥスを浄化してくださったお陰ですよ!剣聖様の御令息である王弟殿下もご参加くださってそりゃあすごかったんですから!」
ヒク と思わず耳が動いた。
「ご立派な御姿だったんですよ!この国は王族も剣を取られるとは言え、実際こんな辺鄙なとこまで王族の方が来られることはありませんし、巫女様だって普通は来られたりしませんしね。あの先々代の巫女様は来られましたけど、それでも祓うまでは叶いませんでしたし……いやぁすごいお方達ですよ」
「そうだな」
代金分を払い、店主がそれを数えるのを眺める。
「それにしても、あんな銀細工の人形のような美しい方があんなことをやってのけるんですからねぇ……すごいですよねぇ、あんな神々しいといいますか……やっぱり私らとは違うんでしょうね」
しみじみと言うその姿はすっかりかすがの信奉者のようだ。
「後は跡継ぎだけですねぇ、早くお祝いしたいものですよ」
釣りを出されてそれを取る手を止めてしまった。
跡継ぎならばもう産まれている と喉元まで出かかった言葉を飲み込む。俺も城を出た今、ヒロが次期国王として発表されるのもすぐだろう……
王都から距離があるとは言えここにもそう遠くない時期に、その朗報は届くはずだ。
簡単な謝礼を言う俺に、店員はやはり怪訝な顔を向けた。
「あのぉ……どちらに行かれるかお尋ねしても?」
「…………」
エルなら適当に相手の納得しそうな言葉を紡ぐこともできただろうが、生憎俺はそんな器用なことはできない。
言葉に詰まるような俺に何かを感じ取ったのか、訝しむ顔を険しくさせて「やめときなさい」と低く告げてくる。
「巫女様が浄化してくださったとは言え、あそこは険しいしまた湧いた瘴気もいるって聞いた」
「…………」
ヒク と肩が動く。
かすがが一掃し、また今後湧かないようにと念を入れてもかすがが細工を行ったこの地でまた瘴気……?
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