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「以前に比べたら全然危険なとこじゃなくなったって言ったって、奥の奥でバケモノを見たって話も聞くしさぁ」
店主は善良な心から言ってくれているのには間違いはなさそうだったが、それこそ俺が探していたモノだろう。
魔人は、瘴気や魔物を率いる。
以前ここを訪れた時にかすがが、元来ここは吹き溜まりで集まり易いのだと言っていた。
この地ならば、あの魔人が辿り着いてもおかしくはないのではないか と思いここまで来てみたが、話を聞く限り可能性がない訳でもないようだ。
そのバケモノが本当にそうであるのか、ただ山が見せた幻影なのかは分からなかったが、それでも俺の考えと撚り合わせれば、手繰ることができないほど細いはるひへの糸がほんのわずかに太くなったような気がする。
連れ去られて……共に帰ることが出来れば良し、もしそうでないのならば、捨て身になれば仇くらいは取ることが出来るだろう。
「あそこに大切な者がいるのだ」
そう返すと店主は気まずそうな顔をして顔を伏せてしまう。
この村は、ゴトゥスで回収することのできた遺体を安置していた場所でもあるからだろう……幾ら村の雰囲気が変わったとしても、そこで生きていた人間の記憶まで変わるわけではない。
店主は俺の言葉をどう受け取ったのか、気まずそうに「そうですか」と呻いて身を竦めるようにして胸の前で手を固く握った。
「……お客さんみたいに、遺品だけでもって来た人もいたけど、難しいみたいだよ?」
そろりと窺う様子は鼠獣人らしい仕草だった。
店主の行動は、入山を諦めさせようと言う言動が薄れて、同情するけど……と歯切れの悪いものに変わっている。
そこには、気持ちはわからなくもないけど、でも……と言う心情が見え隠れしており、思わず苦笑が零れてしまう。
せっかく平和になった村で騒動を起こすな と言いたいのか、それとも純粋に俺を気にしての言葉なのか。
どちらにしても、それでも気に掛けてくれると言うのは有り難かった。
「世話になったな」
「あっ!……無理しないでくださいよ?」
小さな体の店主に外套の裾を引っ張られて、フードがずれそうになったのを慌てて押さえると腰の長剣がガチャンと派手な音を立てる。
「あ、すみませんっ、出過ぎたことを」
「いや」
ぶっきらぼうに返したせいか、店主はびくりと怯えたようだった。
それでも窺うようにこちらを覗きこんでくるから、何も思っていないと言う証拠として口の端に笑いを乗せる。
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