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   皮が残っているもの、崩れかけているもの、そんな様々な形態の魔物達が飛び掛かってくる。 「  っ!」  脇を掠められ、かつてそこに負った大きな傷の痛みを思い出して顔をしかめた。  次から次に襲いかかってくる魔物は確かに厄介であったけれど、明らかに意図した形で俺に襲いかかてくるところを考えると、このまま奥に進まれてはまずいものがあると言っているようなものだ。  それが、魔人の住処なのか……それとも連れ去られたはるひが居るからなのか……  目の前の魔物を切り裂き、中にいたイトミミズ状のものが消え去ったのを確認してから走り出す。 「いちいち相手をしていたらキリがない!」  固い岩肌を蹴り上げて壁を登る、例えそれが急勾配だとしても俺には関係なかった。  幸い、狼獣人はこういった地形を行くのに苦はないからだ、それでも追いすがってくる魔物の臭いに鼻が馬鹿になりそうだと呻く。 「っ⁉︎」  足の下で乾燥した土がジャリ……と音を響かせる。  固い地面の上にある砂が靴底との間で擦られ、足が滑った瞬間飛び出してきた魔物が袖を掠った。  直接肌に触れたわけではないのに、軌跡がひやりとした冷気を纏っているような、そんな感覚がする。  まるで金属のような、熱を吸い取る冷たさに自然と背筋に怖気が駆け上がり…… 「くそっ」  ぞわぞわと蠢き襲いかかってくる魔物達は、もう皮の可動範囲なんて何も考えていないような動きだ。  それは明らかに俺を狙い、害すための意志を持って動き回っている。 「────俺が、邪魔だから?」  自分で呟いた言葉に全身が総毛立った。  なぜ俺が邪魔なのか? 「は……はは、俺がそっちに行くと、まずいんだろう?」  口元が自然と歪む。    岩を一気に駆け上がり、その勢いのままに深い渓谷を飛び越え、対岸の岩へとしがみつく。  俺に追いすがるように何体もの魔物が共に飛び出し……  結局、対岸まで飛びきれなかったために、底から吹く風に煽られながら谷底へと落ちて行く。  ぼたぼたと気味の悪い音を立て、互いにぶつかり合いながら絡まるように落ちて行く様は、なまじ生き物の姿を取っているだけに見ていて気持ちのいいものではなかった。  から……と振動で小石が転がり落ちて行く。  底から吹きあがってくる風は湿度を含んでどこか冷たく重い。 「渓谷を越えて、更に奥……だったな」  ここにかつて魔人がいたと言うことは、ここがそれだけ住まうに適した環境だったからだ。  ならば、同じ性質の魔人がそこを住処に決めたとしてもおかしくはない。  岩に縋りついていた手に力を込めて這い上がり、小さく違和感を感じた左腕に視線を遣る。

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