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 クラドがいい匂いだと言って体を嗅いでくるのとは比べ物にならない、目で見てわかる汚物を摂取されるなんてことに…… 「やめっ  やめてっ!」  必死に腕を動かしたせいで皮膚が擦り切れて痛みをもたらしたけれど、そんなことには構ってはいられない。  ただただ、自分の体から出た汚物に手を伸ばされると言うことに嫌悪感が湧いて喚くことしかできなかった。 「っ  ぅ  」  白くなるほど力を込めたせいで小さくカタカタと腕が震える。  それでも、この傍らで動かなくなってしまった魔人からは逃げられず、思わず嗚咽が上がりそうになった。  魔人は……オレには触れなかった。  オレには、だ。  代わりに零れ落ちた涙、嫌悪感に吐き出したものを長い舌で舐めとり、さんざんもっと寄越せとわめき散らしてやがて電池が切れた玩具のようにぱたりと動かなくなった。  それはどこか突然寝落ちるようにも思えて、奇妙な感覚に胸をかきむしられる思いがする。 「  っ  ふっ」  ぐぐ と力を込めてもう一度拘束している縄から腕を引っこ抜けないかと試し、右手よりも左手の方が少し緩みやすそうなことに気がついた。  とは言え、それもほんの気がする 程度だったけれど、それでも縋らないわけにはいかない。  傍らの魔人は呼吸音さえなくうずくまっているがいつまた起き出すかわからなかったし、その起き出した後もまだオレに触れないでいると言うことを我慢し続けることができるとは思えなかった。  この魔人は、まるで子供のようだから。  そう思ってしまうのは、オレにはヒロがいるからだろう。  欲しいものを欲しいと言って奪い、駄目と叱られて我慢はするも我慢しきれずに目を盗んでは悪さをする。  自分自身も通ってきた道だからわかる。 「  ────っ」  子供の我慢は長くは続かない!  がむしゃらに左手を引っ張り全身で力を込めると、手首や肩の中身がぎしぎしと聞いたこともないような音を立てて軋んだ。それでもこのままここにいた先のことを考えれば、痛いなんてことは言っていられなかった。  ぐっと息を詰めて引っ張った時、わずかに皮膚がずるりと動いた感触がした。  それは痛みだったけれど同時にここから抜け出せるかもしれないって言う希望でもあって、オレはそれに縋って痛みが増すことになんか頓着せずにただただ力を籠め続ける。  逃げ出すことができれば、ほんのわずかでもクラドの下に帰ることができる可能性が増えると信じて! 「  ふぅ  っん」  がりがりと皮膚が削れる気配がしたけれどひるまずに力を込める。  一気に引き抜けてしまった時はもんどりうってしまって、あわや魔人に倒れ込むんじゃないかってなっていたけれど、寸でのところで堪えることができた。

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