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小さな呻きと共にガシャンと金属の放り出される音がして、クラドがよろけて尻をつくのが見えて駆け寄ろうとしたら「来るな!」と鋭い声が向けられた。
「な、なに……」
「 っ 大丈夫だ、問題ない」
よろりとふらつきながら立ち上がるクラドは、目を開きにくそうに顔をしかめていた。
近寄ってもいいものか心配ではあったけれど、あの瞬間に空気に走った緊張はもう霧散してしまっていてどこにもその雰囲気は見つけられない。だからそろりと近づいてみると、放り出された小刀が地面の上でパリパリと微かな燐光を放って……まるで威嚇しているかのようだ。
顔をしかめたまま目頭を押さえて呻くクラドに代わって、そろりと落ちている小刀に手を伸ばす。
急に掴みかかる勇気はなかったから、指先を伸ばして熱いものにでも触るかのようにチョンっと触れてみた。
パリ と小さな抵抗のように光が散ったけれどそれだけで、先程のように空気を換えてしまうようなほどのナニかは起こらないようだ。
「さっきのが、反発 ですか?」
クラドが持ったままのナイフに目をやると、その表面に雫が浮かんでいるように見える。
とは言えその雫は重力に従って地面に落ちることもなく、鏡面のナイフの刃に留まり続けていた。
「ああ っくそっ目がチカチカする」
そう言いながらクラドはオレの手から小刀を受け取ると、革に包んでまたベルトにしっかりと括り付ける。
「はるひ、このナイフはきちんと聖別されている」
「あ……」
よかったですと言えばいいのだろうけれど、やっぱり巫女でもないオレがそんなことをしてしまったことに罪悪感があって、もごもごと口の中で曖昧な言葉を呟いた。
「しかも、巫女様の聖別されたものとは反発することがなかった」
「……はい、えっと……兄弟だからでしょうか?」
「わからないな」
クラドの返事は簡潔ではっきりとしている。
答えをクラドが持っていないのはわかっていた、今まで一度に二人の巫女が召喚されたことなんてないんだから、その同時に呼び出された二人の力が反発するのかしないのかを確認することができるはずがない。
オレが巫女の弟だから?
今考えて思いつくのはそれくらいのことで、他に理由は思いつかなかった。
自分に関することで説明のできないことがあると言うのは何とも落ち着かない気分にさせる。
「何事も、帰ってから考えればいい」
ふわふわの頭をまぜっかえすように撫でられると、オレが頭の中でぐるぐると煮詰まってしまっている考えを追い払うかのようだった。
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