228 / 304

2−103

「どうした?何かあったか?」 「いえっ……たいしたことではないんですけど、もしかしてオレが巫女の力を使えるようになったのって、かすが兄さんがずっと聖別したものを食べてたからじゃないかなって 思って……」  言ってはみたものの自信がなくなってきたのか、はるひの言葉はしりすぼみだ。 「なるほど」 「な、なるほどって……ん、兄さん、飲み水に食べ物に、オレの口に入るものは全部聖別してくれてたじゃないですか」  思わず思い出して「あー……」と唸った。  兄や自分の分は特にそう言ったことはしないのに、はるひの食事は事前にかすがが聖別していた。  もちろん、聖別したからと健康なはるひに対して何が変わるわけではないのだけれど、かすがは「除菌! 殺菌! 滅菌!」と言いながら酷い時は風呂の水にまで聖別を施して……  常軌を逸したようにも思えるかすがの兄弟愛を前にして、俺は切腹せずに済んだことにほっと胸を撫で下ろすしかない。 「だから、もしかしたら兄さんの力が少しずつオレの中に溜まって行ってて、それでいっぱいいっぱいになって溢れ出したんじゃないかなって」  真剣な様子にそう言われて、そんな馬鹿な……と笑って返すことができないのは、もしかしたらそう言う可能性が無きにしも非ずだからだ。  かすがやミロク曰く、巫女は神と交流して神の力を身に蓄える、すなわち器に過ぎないのだ と。  その器に神の力を溜めて現世で奮い、枯渇すれば神に会ってその力を再び溜める。  そう言う理屈らしい。  だから力をよく使うミロクもかすがも頻繁に神に祈りを捧げて会いに行っていた。  かすがの弟で、気性はともかく性質が似ているのだとしたら、はるひにも巫女の資質があるのかもしれない。  それが常にかすがから与えられる神聖な力をため込み続けて……? 「……そうかもしれないし、違うかもしれない。それなら力は使えるが巫女ではないと言うことになる」 「あ、……ですよね」 「ただ、巫女の定義が異世界から来た神の力を操る人物のことを指すならはるひは巫女だ」  そう言葉に出してしまうと、ざっと胸の中に不安が吹きつけてくる。  はるひがもし二人目の巫女だったとして……   「…………」    巫女は王家に嫁ぐ決まりがある。 「……っ、今はそんなことよりも山を下りよう」 「あ、はい! ごめんなさい、変なこと言っちゃって」  ちょっと失敗したような笑いははるひ自身にも何か思うところがある時の笑い方だ。  今すぐ下山を中止して、何を考えているのかお互いにしっかり話し合うことができたらいいのだが……  

ともだちにシェアしよう!