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「王族を連れて帰ってくるように人を送った。我々はここを離れるぞ、この地域は閉鎖だ」 「そんなっ!」  どこまでも固く感情の籠らない言葉を発する前国王に、オレは思わず抗議の言葉を上げてしまう。 「人が流出すれば村は廃れるとおっしゃいました! ……なのに  」 「あんなモノの傍で健やかな生活が営めるとは思わぬ」  背を向けた前国王がちらりと肩越しに視線をやった先には、恐竜が首をもたげたかのようなシルエットが幾本も立ち上がっていた。 「対策ができるようになるまでは人を近寄らせず、余計な刺激と餌を与えないように」 「待て! 俺がここから   っ」 「止めておけ、攻撃できたとして、周りの瘴気や魔物が避雷針代わりになるだけだろう」 「そん そんなことやってみねぇとわからねぇだろ!」 「下手に刺激して、あれらが村に雪崩込んだらどうする?」 「う……」  怒鳴り返す言葉をことごとく冷静に返されて、ミロクはそれだけで酷い傷を負ったかのように弱弱しく項垂れる。 「第一、今、下手に撃ったらアレを持つ者に当たるぞ」 「…………っ」  ぎり と奥歯を噛み締める音がこちらまで聞こえてくるようだった。  ミロクは背を向けたままの前国王の方を見た後、山を見て今にも泣きそうな顔をして…… 「かすが! 何かいい案はないのかっ! お前、そう言うの得意だろ!」  頭上から喚かれて……かすが兄さんはわずかに眉間に皺を寄せてみせた。  真っ直ぐに天を見上げる姿は、やはりいつも人間離れした美しさを見せて、かすが兄さんがこのまま突然不思議な力を使って魔人達を浄化してしまったりするんじゃないかと思わせる。  山から吹く風が生暖かく、なのに隙間を縫うようにところどころ冷たい空気を含んでいて、その気持ちの悪さと空気の重さに皆が押し黙ってしまった。  前国王の、「もう打つ手はない」の一言が怖くて、何か言葉を紡いて状況を好転させなければと思うのに、やはりオレは何も思い浮かばない……   「一つ、あります」  鈴を転がしたような清涼な声は、台風の前のような不気味な空気をさっと切り裂く。  決意を宿した瞳にはっきりと視線を向けられて、オレははっと息を飲んだ。     ◆  ◆  ◆  黒く、けれどしなやかな銀の光を宿す大剣は剣聖である母の得物だ。  ただの銀ではなく、黒く光る特別な金属で作られたそれはこの世のもののどれよりも固く、しなやかで、そして重かった。  残念ながらそれを振り回せるほどの体格にも膂力にも恵まれなかったために、母はそれを俺に譲ることはせずに、唯一その大剣を扱うことのできた弟子に託したのだけれど。

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