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化け物だとは思っていたけれど、かろうじて人の形を保っていたそれを脱ぎ捨てて……魔人はもう化け物そのままだ。
「う゛ 」と、低く音が聞こえた時、まるで大地が唸るかのような辺りを震わせるそれが叫びの始まりだとはわからなかった。
「ぅ゛ぁ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛────っ!!!」
どっと叫び声が衝撃となって体にぶち当たる。
反射的に耳を覆ったけれど、それでも至近距離で聞いた魔人の叫びはぐらぐらと脳を揺さぶるような強さだ。
「 ────閣下っ!」
わんわんと音が残る耳に確かに聞こえたのはラムスの声だった。
後から俺の隊が着く と言ってはいたが……
「まさか、全員来たのか……?」
山だと言うのに、俺の……いや、本当ならば元俺の隊の全員が整列してさっと敬礼をした。
もう俺は騎士であることを放棄し、まとめるべき団長と言うわけでもないのだからそんなことをする必要もないのに……
「勿論です! 閣下直属部隊『漆黒』、全員馳せ参じましたよ」
ハンネスがなつこい目に力を入れてそう宣言すると、俺の方に全員の視線が集まったのが感じ取れて……
「 っ、敵は神の力を摂取した魔人! これまでのものより大きく、かつて都を襲ったものと同じだと思え!」
手早くそれだけを告げて火薬玉を取り出す。
例え大きくなろうとも、今現状俺達が知っている対処の仕方なんて、聖別された火薬で焼き、そこを削ぎ、そして再生しないようにそこをまた聖別された火薬で焼くと言う手順しかない。
魔人が火に炙られることに弱いと発見できたのはよかったことではあるが、いかんせんこれでは長期戦を免れなかった。
「クラ 閣下! それを!」
隊員達がさっとスリーマンセルを組み散っていく中で、ダンクルは俺に駆け寄るとスティオンが投げてよこした鞄を指さす。
「怪我でもされましたか⁉︎」
「違う! その中の短剣を取れ」
どうして短剣だったんだろうと思っていたが、言葉通りそれを取り出して見せる。
なんの変哲もない増産された短剣だと思ったけれど、わざわざこうして言うのだからもしかしたら特別なものなのだろうか?
「これは?」
「それはミロクが聖別したものだ」
そう言われて、はるひと試した際の反発を思い出してさっと眉間に皺が寄った。
もしも戦闘の最中にあんなことが起こったら と思うと、これを持たせた意味が分からずにダンクルを見るしかできない。
俺の視線に頷きながら、ダンクルは「刺せ」と簡潔に告げる。
刺す? どこを? 誰を?
答えは魔人のどこかをこれで刺せ と言うものなのだろうが、どうしてそれをしろと言われたのかがわからない。
「どう言うことですか?」
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