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「ヒロのことを、ありがとうございました」  ほんの少し離れていただけだと言うのに大きくなったように見えるし、少し言葉がはっきりしているように聞こえる、何より自分の意思を表現しようとする態度が成長したのだと教えてきて…… 「ヒロの成長の、見逃しが多いな……」  原因のすべてが自分の言葉が足りないせいだと十分わかってはいるが、それを改めて痛感することになるといたたまれない気持ちになってくる。  けれど…… 「これからの成長を見逃すことは、絶対にないからな」  はるひに抱かれて嬉しそうに笑うヒロに向けてそう言うと、俺の決意は固まった。     幸い、騎士の証であるカメオは「紐が切れて落ちていた」と言われて手元に戻ってきてはいたが、俺の肩書は大公でしかない。  大公は王族から籍を抜けた者の受け皿であり、後継者を必要としない一代だけの位だ。  子を授かることのできないはるひと、子孫を残すことが義務である俺との婚姻を許可してもらうためにとった苦肉の策だったはずで、本来ならばそれでうまく話はまとまるはずだった。  だが、ヒロが神と同じ姿で生まれ、  はるひが巫女であることがわかってしまった今、  その座を望んでしまったことがこれほど足かせになるとは思いもしなかった。  はるひとヒロとの平和を望んでいるだけだと言うのに、すべてが裏目に出てしまう。   「  太陽の如きクルオス・ケヴィア・リ・ミロク・シルル国王陛下にご挨拶申し上げます」    扉を入って一番にそう挨拶をすると、執務机に向かっていた兄はこれ以上ないと言いたいほどのしかめっ面をこちらに向け、面倒そうに尾で座るように指示を出してくる。  白と黒の尾に促されるまま執務机の前にあるソファーに腰を下ろした。 「陛下、お話が」 「待て。今スティオンからの報告書に目を通している」  仕事だ と言われてしまうと何も言い募れない。  少しでも決心が鈍らないうちにと思っていたけれど、出鼻をくじかれた気分だった。 「はぁー……」  長い溜息が終わる頃、侍女を下がらせてエルが茶の準備を持って執務室に入ってくる。  そのげっそりとした様子は、今回のゴトゥス山脈の後処理に追われたせいなのかどうなのか…… 「お茶に酒を入れてもいいですよね、入れましたけどね」  エルの言葉は俺達の同意を必要とはしていない。  どぽどぽと優雅さのかけらもない勢いで茶を淹れると、エルはオレと兄の前にガチャンと乱暴にカップを置いてソファーにどっかりと腰を下ろしてしまう。  いつものエルらしくない態度は、今回のことでどれだけエルに負担をかけて、ストレスをかけさせたかを物語っている。 「エ エル、にも迷惑を  かけ、か、か、かけた、な」  

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