279 / 304
落ち穂拾い的な 三人の関係は
すっかり黒い色の落ちた尾はいつも通りの白銀と漆黒の艶のある優雅なものだ。
執務室の椅子に腰かけながらそれを左右に緩やかに振ると、それだけで何も申し開きできなくなる。
「 ────お前はどうしてああもまず自分を犠牲にしようとするんだ」
静かだけれど上に立つのに慣れた……いや、生来の王として持っている資質が俺を押さえつけた。
「はるひを救いに行って自分がやられていたら本末転倒だろう! なぜ諦めようとした?」
「諦めではなく……はるひが生存できる最善をめざ 」
「馬鹿か!」
言い訳なんて聞いてくれないばっさりとした怒鳴り声に、俺は萎れるようにして耳を寝かせるしかない。
けれどあのゴトゥスでの戦いの際、俺が守るべきものははるひの命であり国王である兄の命なのだから、あれはあれで最善だったと思っている。
……ただ、それの結果ではるひやヒロに悲しみを与えてしまうのは本意ではなかった。
「お前は俺を盾にしてでも生き残ろうとするべきだっただろう!」
「王を盾になんてできるわけないでしょう」
とは言え、兄の戦闘スタイルから盾役にしてしまったのは致し方ない。
「何のために俺が出向いたと思っているんだ!」
「いや、出向いては駄目なのではないでしょうか?」
「馬鹿か! 出向かなかったらお前は今頃ゴトゥスの塵だろうが!」
「……」
それは確かなのだから何も言い返すことはできない。
はるひに拾われたこと、スティオンと共に兄が駆けつけてくれたこと、俺の隊が間に合ったこと、どれをとっても針に糸を通すようなわずかなことを繰り返すことができた結果の出来事が重なって俺は助かった。
そのことに関しては、神に感謝するしかない。
「兄上には感謝しています、来てくださらなかったらと思うと 」
言葉を途切れさせて俯くと、さすがに兄も俺の反省の色を見て取ったのか「わかったならいい」とぶっきらぼうに告げてくる。
俺を叱りつけるのもすべて俺自身のことを想ってと言うのがはっきりとわかっているから、こうして一対一で対面していても怖くはなかった。
「おや、話し合いは済みました?」
頃合いを見計らってかエルが顔を覗かせる。
鳥獣人らしい艶のある深い緑の髪をかき上げて、手際よく執務室の応接セットを端に寄せると兄の方へずんずんと遠慮のない歩き方で近づいていく。
エルのその行動に、兄がさっと表情を変えた瞬間だった。
「────っ!」
椅子に腰かけていたと思った兄の体が机を越えて飛び上がって……いや、放り投げられて……
ともだちにシェアしよう!

