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落ち穂拾い的な 幼い王太子の初恋
猫を飼ったのだろうかと辺りを見回すが、エサ皿があるわけでもなく水飲み場が作られている様子もない。
─── にぃ ……
けれど声は確実に聞こえる。
狭く物のない部屋の中、子猫が隠れていたとしてもすぐに見つけることができるはず……もう一度鳴いてくれないかと耳を澄ませながら歩き出すと、にぃ と今までよりもはっきりとした鳴き声が聞こえた。
この部屋の中に猫がいることは間違いないようで……
しかしロニフが小動物を可愛がる趣味があったのだろうかと言う疑問が湧く。そして湧いたからにははっきりさせておかないと、野良猫がはいっていたらこの部屋をあらしてしまうかもしれない。
「……どこ ?」
部屋の片隅にある実家から届けられた木箱。
気づいて見てみると木箱と言うにはどこかおかしい。側面の板が幾つも外されていてまるで檻のようだ。
……これは と近づいて木箱のフタ部分を取り上げてみると。
「にぃ にぃ にぃ!」
まだ言葉にもなっていない泣き声を叫ぶ小さな生き物が布に包まれていた。
「……は?」
真っ黒い耳と猫じゃらしのように細く頼りないが、けれど真っ黒なしっぽを懸命に振って俺の方へと手を伸ばして鳴いている。
赤ん坊なのに細い手足が伸ばされて……
俺はこの赤ん坊がロニフの子供なのだと、そして父親は俺と同じなのだろうと言うことを一瞬で悟った。
いや、正確には父親が誰かなんてのはどうでもよかった。
ただこの瞬間、いろいろなことを考えてしまったのだ。
この先、父が弑逆された先、父との間に絆のあるロニフはいなくなってしまう可能性もあるが、もし他の絆があったらこの国に残り続ける可能性が高くなる。
例えば、王族の子の母親だったとしたら?
子供はロニフを引き留める楔になるだろう。
「にぃにぃにぃ!」
必死にしがみつこうとする黒い赤ん坊は、おしめから小便やいろいろが垂れ流されて酷い状態だった。
ロニフの毎日を見ていると、この子は朝一回と昼過ぎに一回、そして深夜になるまで世話を焼かれないと言うことになる。ましてや今日は市井に見学に行っているのだから、ロニフは朝早くここを出たままと言うことになる。
「……っさすがにこれはないだろう!」
誰に言うでもない怒鳴り声のせいで赤ん坊が「ぴーっ」と泣き出したがそれにかまっている間はなかった。
とにかくこの子供でロニフを繋ぎ止めなければならない。
そうなれば俺がすることはたった一つだった。
王宮内を走り抜けて、王宮の一角にないよりはまし程度に備えられている教会へと駆けこむ。
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