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落ち穂拾い的な パンツください
「パンツをくれないか?」
低く響きのいい声でクラドがそう告げてがばりと土下座するから、オレは思わず後ずさりながらズボンを押さえるしかできなかった。
嫌だ と呻いて腰に回された手に力が籠る。
なんとかなだめすかして土下座をやめさせたものの、今度はオレの腰にしがみついて離れない。
いつもの凛々しい姿はどこへ旅立たせてしまったのか……それともこれはクラドの皮を被った見知らぬ人なのだろうか?
「わかってる、わかっているんだ……ヒロのためだと」
そう呻き声の間から言葉が漏れるから、オレはあまり強い言葉を言えないまま小さく「はい」と同意を示した。
事の起こりは王の一言で、「箔をつけるために剣聖として認められて来い」と言うもので、唐突に何を言うのかと目を白黒させるオレ達を置いて、当人は双子のイティとオフィを覗き込みながら満足そうに笑っていた。
要は、ヒロのために少しでも地盤を強めたい と言う提案の話で、ゴトゥスの英雄と秘匿の巫女の他にもつけられるものは何でもつけておけと言う意味らしかった。
剣聖の孫よりは、剣聖の子、そんなわずかな差でも王族として育たないヒロには必要なのだ と。
本来なら幼い内にヒロをかすが兄さんと王の子として養子に出すべきだと言うことは、政治に疎いオレでもわかることだった。
幾ら王弟とは言え今では王族の名もなく、一代限りの大公位となったクラドでは後ろ盾として盤石とは言い難い。
そしてそれはオレも同じくで、巫女とは言えかすが兄さんのように活動した経歴もなければ貢献した事柄もゴトゥスの再浄化の際の一度きりだ。
かすが兄さんの威光はあるだろうけれど……そもそもこの世界に親族のいないオレには、それ以上の地盤を用意することはできない。
「貴族達に侮られないためにも少しでも肩書がいることも」
王の弟として可愛がられてはいると言ってもそこまでだ。
他の弟達よりは目をかけてもらっていると言う程度で、政治的なやり取りが得意ではないオレとクラドができることなんて……
少しずつでも足場を固めていくことしかない。
「ゴトゥスの英雄だけでは……いけないのでしょうか?」
「争いごとの英雄って言うのは時が経ち、恐怖が薄れれば軽んじられることも多い」
はぁー……と溜息を吐きながらやっとクラドが腕を外して寝返りを打った。
「最終的には戦争屋だと言われてしまうのは避けなければならない」
「それなら、剣聖は……」
やっぱり必要のない称号なのでは? と言う言葉が口を突きそうになる。
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