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第1話(マイク)
〜7 days ago (7日前)〜
「それ、婚約指輪?」
仕事中は紛失したり傷付けたりしない様にネックレスにぶら下げている指輪が、前屈みになった時に服から出ていた。
「ああ、そうなんだ」
先月、スティーブからプロポーズされた。
嬉しかったし、この指輪も大切にしている。
「いいね、おめでとう。幸せそう」
トビーと名乗った彼は、最近よく花を買いに来る常連だ。彼に頼まれた花束用の黄色いバラを花桶から取り出す。
「ありがとう」
トビーにはそう答えたが俺はスティーブのプロポーズを保留にしている。
自分の中で、これからどうするべきなのか答えが出せなかった。
俺はスティーブを心から愛しているし、ずっと一緒に居たいと思ってる。
スティーブの全部を独り占めしてしまいたいとさえ思ってる。
でも、、、それが叶わない事も分かってるんだ。
スティーブは俺の返事を急かさず
『君の決断を待ってる。僕の気持ちは変わらないから』そう言って優しく微笑んだ。
俺はスティーブの瞳の奥の方に悲しみを見つけたけど気付かない振りをした。
長身でモデルの様なスタイル、輝く金髪、大きなブルーの瞳。鼻筋が通った上品な顔立ち。
WIAのエージェントでスーパーヒーロー。
それが俺の恋人。
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