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第2話(スティーブ)

「スティーブ、明日から北京支部じゃないの?」 訓練室の隅で休憩しているとダイヤモンドがミネラルウォーターのボトルを持って現れた。 「そうだよ」 「じゃあ今日ぐらいは早く帰らなくていいの?マイクが待ってるんじゃない?明日から暫く会えないんでしょ?」 「そうだね」 明日、中国へ発つ。 行き先は北京支部を経由して山東省の煙台市だ。 預言者と呼ばれる未来を見るネオヒューマンズに会いに行く。 真偽は分からないがマイクが覚醒前のネオヒューマンズであるらしい事や、マイクが覚醒した時に世界が滅びるという予言を確認しに行く。 そして、僕の恋人でもあるマイクは、、、 マイクの未来は、、、 僕ではなくブライアンと結ばれていると預言者は言ったらしい。 そんな話、信じている訳じゃない。 絶対に信じない。 だけど、マイクは僕のプロポーズを保留にしている。 心の奥底にジワジワと広がる不安に落ち着かなくなって訓練室で身体を動かしていたら、いつもの帰宅時間を過ぎていた。 「なんかあった?」 「いや、大丈夫だよ」 「なら良いけど。たまには私にも頼ってよね。お兄ちゃん」 同じチームで同僚のダイヤモンドは兄の様に慕ってくれる。 彼女は身体をダイヤモンドの様に硬化出来るネオヒューマンズだ。 そして一族全員をカサドールに殺された。 僕に仲の良かった兄の姿を重ねているんだろう。 それに人造人間で兄妹どころか両親さえ居ない僕には、妹が居たらこんな感じなんだろうか?と思わせてくれる存在だ。 恋人で最愛の人マイクも、ダイヤモンドも僕に人間としての感情をいつも教えてくれる。 「ありがとう、いつも頼りにしてる」 ダイヤモンドに急かされ、訓練室のシャワーを浴びると直ぐに帰宅する事にした。 マイクに合鍵を貰ってからは、自宅よりもマイクの家に帰る事の方が増えた。 身支度を整えてスマホを見るとWhere are you?とマイクからメッセージが入っていた。 I’ll be with you soon. すぐに帰るとだけ伝えて、マイクの元へ急ぐ。 僕の在るべき場所だ。 預言者のように未来は僕には見えない。 ただ、僕の気持ちが変わらない事だけは確信している。

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