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第3話(カイト)
「おはようカイト」
あ?
「朝食は何が食べたい?」
チュっと音を立ててキスで起こされた。
え?
「ん?どうした?まだ眠たい?もう起きないと大学に間に合わないんじゃないか?」
夢、、、じゃねーな。
目の前には交際をスタートして一カ月程の男が居る。
既に着替えを済ませていて今日も高そうなスーツにいい匂いをさせてる。
堀の深い顔立ち、お洒落な髭、40代にしては鍛えられた身体。
名前は、アメリカ人、いや、世界中の誰もが知る大富豪のトム·コーヴィン。
俺の同棲中の彼氏だ。
「おはよぅ、、、眠たい」
ゆっくり起き上がる。
俺達のメインベッドルームは俺と親父の家より広い。
ベッドは天蓋付きキングサイズ。
同棲をスタートして数週間、一緒のベッドで寝起きするのにもまだ慣れて無い。
「そろそろエレナが急かしに来る。食堂へ降りよう」
「待って、すぐ着替える」
「先に降りてる」
キスをして先にトムは部屋を出た。
俺は自分の衣類を入れているクローゼットから適当なパーカーやジーンズに着替えて、バスルームで身支度を整えると階下へ降りる。
長い螺旋階段を降りるんだ。
そう、ここは19世紀に作られた小さな(全然小さく無いよ)城だ。
しーろー!城!お城ね!castle!信じられる?!
城内は総リノベーションされ水回りは最新式だけどね。床暖も入ってるし。
にしても、俺がまさかこんな所であんな奴と同棲するなんて今でもたまに信じられない。
階下へ降りるとメインダイニングへ向かう。
20人座れるダイニングテーブルの上座ではトムが優雅にコーヒーを飲みながら隣に控える超美人有能秘書と談笑しながら打ち合わせ中。
コレは毎朝の俺の嫉妬案件ね。
トムの反対隣に座るとメイドが朝食のリクエストを聞きに来た。
ミシュラン三つ星のイレブン・マディソン・パークから引き抜いた一流シェフのビクターが作る豪華な朝飯。
これが俺の一日のスタート。
俺は今、コロンビア大学附属の語学学校American Language Program(ALP)に編入した。
ネオヒューマンズクラスのあるコロンビア大学入学を目指して目下英語勉強中の身だ。
あ、ネオヒューマンズってのは新しい人類って意味で遺伝子の突然変異で超能力がある人間の事。
俺は身体に電気が流れてて操れる。トムは触れた相手の心が読める能力者だ。
そんな非日常が俺の今の日常になりつつある。
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