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第4話(トム)

「社長、明日からの北京出張には私は同行出来ないんですか?」 メインダイニングでコーヒーを飲みながら朝一の打ち合わせだ。 エレナが明日のスケジュールを見ながら恨めしそうに言った。  「WIAの北京支部行きなんだよ。社外活動だからね。明日からの打ち合わせは全てオンラインで」 「中国国内はzoomが不安定になるので別のオンライン会議用のアプリを入れて置きます」 我が有能秘書は抜かり無い。というか、出張中でも遊ばせてはくれないつもりだ。 明日からはWIAのスミス長官から直々に中国行きを依頼された。 理由はこの僕の能力だ。触れた相手の心が読める。 まあ、最近では強い思念は触れなくても聞けるようになった。 この能力が目覚めてから10年以上だが初めて力を自分でコントロール出来る様になってきた所だ。 今回の中国行きは預言者と言われているネオヒューマンズに会い、僕に預言者の本心を探らせるのが目的のようだ。 長官はどうやら預言者を信じていないらしい。 どんな旅になる事やら。 それに、、、 1週間とはいえ、カイトと離れるのが正直な所、辛い。 カイトとは付き合って一カ月。多少強引だったが同棲を始めた。 毎晩、ベッドで寝顔を見るだけで愛おしい恋人。 僕は久しぶりに恋愛にどっぷりハマっている。 「宜しく頼むよ。僕はそろそろカイトを大学まで送ってくる」 朝食を食べ終えたカイトは自室で荷物を準備しているはずだ。 2階のカイト専用の私室へ行くと窓際に立つ若い恋人は外をぼんやり眺めていた。 「何を見てるんだい?」 近づいて後ろからそっと抱きしめた。 「え?ビックリした!」 驚いたカイトが身体をビクッとさせた拍子に指先で静電気がバチッと音を立てた。 カイトは僕を恨めしそうに見上げる。 「驚かすなよ」 「あはは、君が可愛かったからつい」 「可愛いって、、、感電させたらどうすんだよ」 ぶっきら棒な話し方でも、顔を赤くして照れているのが分かる。 僕は何故かカイトの心だけは読めない。 だから注意深くカイトを見ている。 読めないカイトの心を、僕自身がしっかりと受け取れるように。 「大学まで送るよ」 「1番地味な車でお願い」 「はいはい、僕は目立つのが大好きなんだが僕の可愛い恋人はとってもシャイだからね。地味な車でお送りします」 「どうせ地味な車なんて持って無いだろうけど」 今まで付き合って来た女優やモデルと違う。 カイトは僕の金や財産、地位、権力には興味が無い。 何も無いただの男の僕を見てくれる貴重な存在。 僕がずっと求めていた存在だ。

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