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第7話(カイト)

最近の悩み。 それは、、、 「愛してるよカイト」 この激甘恋人モードの彼氏に付いて行けない事。 唇に軽くキスされた。 「ア、イッ、イッテキマス」 恋愛経験値の差か。 俺が童貞だからか。 どっちもか。 上手くキスも出来ない。 同棲してんのに、それ以上にもなかなか進めない。 「帰りはウィルに連絡を」 「り、了解です」 トムは毎朝、高級車で大学の入り口ゲートまで送ってくれる。 実はネオヒューマンズクラスのあるコロンビア大へは一般生徒とは別の秘密のゲートから大学内へ入る。 トムはいつもゲートの前に車を停車するとキスで送り出してくれる。 車を降りて、コンクリートに金属の扉だけがあるゲートを網膜スキャンで開けた後は、小さな非常灯しかない真っ暗な階段を降り地下道まで進む。 地下道の入り口は声帯認証。 「コード7731a2」 コレが俺のコード。 【おはようございます、カイト。今日も素敵な一日を】って自動音声が流れてゲートオープン。 ここからは近代的で無機質な廊下が大学まで続く。 途中にはWIAの研究施設も入っているらしい。 「カイト!おはよ!」 「イチ、おはよー」 俺のネオヒューマンズ仲間で日本人の市ヶ谷遥。 遥っていう名前が女みたいで嫌らしくイチってあだ名で呼んでる。 ちなみにイチは身体の中に発光体があって光を自在に操れるらしい。 最近、自分が電気を操るネオヒューマンズだと分かったばかりの俺には同じ境遇の同世代は心強い。 「来週のニューヨーク支部研修、楽しみやな」 「俺はあんまり行きたくない」 俺の能力をオモチャに実験するメガネ男が居るからだ。 「え?なんでや?!エージェント•ワイルド率いるニューヨーク•ブラックに会えるかもしれへんのに!」 イチは戦闘力の高いネオヒューマンズや能力者で構成されたエージェントチームのチーム•ブラックのファンらしい。 その中でもWIAでは人気NO1(イチ調べ)のエージェント•ワイルドのファンだ。 「好きだね、エージェント•ワイルドって人」 「俺も将来は世界を救うエージェント•ワイルドみたいなスーパーヒーローになぁる!!! 「こんな所で騒がない」 突然、背後からエージェント•アンダーソンが現れた。 金髪に陶器のような白い肌、小柄で細身の美貌。 俺たちコロンビア大学附属の語学学校American Language Program(ALP)ネオヒューマンズクラスの担任であるブレイン先生の夫だ。 2人は同性婚で夫夫らしい。 ちなみにブレイン先生が言葉で人を操れるネオヒューマンズ。 夫のエージェント·アンダーソンはブレイン先生のファミリーケア担当。簡単に言えば護衛かな。 「おはようございます」 「おはよ」 「あれ?ブレイン先生は一緒じゃないんですか?」 2人はいつもペアでしか見た事が無い。 「、、、、」 エージェント•アンダーソンは美しい顔を子供の様に顰めた。 あーこりゃ喧嘩したな。 触らぬ神に祟りなしだ。 イチも同じ意見らしい。 「俺ら寄るとこあるんで先行きます!」 イチは俺よりも数段流暢な英語で言うと俺の手を引いて先を急いだ。

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