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第12話(トム)
「すまない、カイトとのデートプランを考えるのを手伝って欲しいんだ」
「良かったです。もし私をデートに誘っていたなら丁重にお断りしなきゃならなかったので」
エレナは僕を恋愛対象として見ていない。
だから秘書として近くに置きやすい。勿論、優秀過ぎるぐらい優秀なのも事実。
「デートプランを相談するならハニーやウィルより君だろ」
「AIとオジサンに相談しなかったのは正確ですね。いくつかプランをピックアップしておきます」
エレナは本当に優秀だ。
「ありがとう」
「いつまでに必要ですか」
「僕が中国から戻るまでに」
「了解です、ボス」
さて、中国から帰国したらカイトと2人きりのデートだ。
そろそろ僕たちも関係を進めても良い頃だろ?
男同士の恋愛は未経験ながらも予習はバッチリだ。僕は好奇心旺盛なタチでね。
エレナと話していると、あっという間にNASAに着いた。
関係者用のパーキングへ周り、警備スタッフへセキュリティカードを見せる。
「トム•コーヴィンさん!どうぞ中へ」
陽気な恰幅の良い警備スタッフがゲートバーを開けた。
「ありがとう」
「あの、後で一緒にお写真撮らせてもらえませんか?姪があなたの大ファンで」
「写真は断ってるんだ」
そう言った瞬間にその警備スタッフの思念が流れ込んできた。
【末期癌のキャシーに写真見せてあげたかったな】
「、、、写真より動画にしよう」
車の運転席の窓を全開にする。
「動画撮らせてくれるんですか?」
「ファンは大切にしてるんだよ。スマホ貸して」
●REC
「やあ!キャシー、僕はトム•コーヴィン。君の叔父さんから、君が僕のファンだって聞いたよ!ありがとう。闘病生活は大変だろうが頑張って。何か励ませるモノを送っておくよ。じゃ」
「はい、携帯返すよ」
「ありがとうございます。キャシーも喜びます。というか病気のこと話しましたっけ?」
「じゃ、急ぐので失礼」
ゲートを潜り来客用の駐車スペースに車を停めた。
車を降りると腕時計型になっているハニーに直接話しかける。
「ハニー、さっきのキャシーにプレゼント送っておいて」
「NASAの駐車場警備員のJ.サンダース氏のデータベースへ問い合わせました。姪のキャシーは詳細確認しています。贈り物はAmazon人気ランキングから選択します。他にご用件はありますか?」
「いや、大丈夫だ。ありがとう」
さて、今日も一仕事だ。
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