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第17話(マイク)
ヒソヒソと小さな声がする。
暗闇のなか数メートル先に長い髪をした女の後ろ姿だけが見える。
小さな声で何かを喋ってる?
誰?
近付こうとしたけど自分の足が思う様に動かない。
足が冷たい。膝まで水に浸かってる?
前に進めない。
誰?
何故だか凄く不安なんだ。
でも、目の前にいる女の顔を確かめたい。
誰なのか知りたい。
必死に水中の足を動かして、前に進む。
誰だ?
手を伸ばし肩を掴むと、その女はゆっくり振り向いた。
「?!」
そこには俺の顔をした女が居た。
恐怖に身体が竦む。
その時、背後からスティーブの声がした。
「マイク!」
ゆっくり振り返ろうとしたけど俺より先に女が反応する。
「スティーブ!」
女は足取りも軽く俺の脇をすり抜けスティーブに駆け寄ると抱きついた。
スティーブは女を抱き締めると愛おしそうにキスをする。
「もうすぐ、全部私のもの」
俺の顔をした女は振り返って俺に微笑みかけた。
背筋が凍りついた。
「マイク!マイク!」
スティーブの声に飛び起きる。
「大丈夫?ひどく魘されてたから」
夢?
「だ、大丈夫」
「水を持って来ようか?」
「大丈夫、ありがとう」
リアルな夢だった。
それに、、、
今日、階段で聞いた女の声に似ていた。
「怖い夢だった?」
スティーブは心配そうに顔を覗き込んできた。
その瞳に映る自分の姿にまた動揺する。
怖い夢だった。
物凄く。
「スティーブ、、、」
もっとスティーブを近くに感じたくて胸元に顔を埋める。
スティーブは優しく背中を撫でてくれた。
「大丈夫?」
「うん、ありがとう」
この不安は何なんだろう。
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