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第24話(トム)

秋バラが咲き誇る庭に、似合わない小型ジェットが停まっている。 タラップからは前に会った金髪碧眼の美しい男が出てきた。 タイトなブラックの戦闘スーツからでも分かる筋肉隆々の身体。 確かエージェント•ワイルドだ。 老若男女を虜にしそうな美貌を持つ男。 「中へどうぞ」 「どーも。君、いつみてもエージェントよりモデルの方が似合いそうだね」 「カメラに向かってポーズを決めるのは苦手なので無理ですね」 少し困った様な顔で笑う。 コレは本当に老若男女を落としそうだな。罪な男って言葉がピッタリだ。 ジェットの中に入ると、ニューヨーク支部長のウィルことウィリアム•ハワードと、初めて会う男が居た。 「やあ、トム。今回の中国行き、受けてくれてありがとう」 ウィルと握手を交わす。 実はニューヨーク支部長のエージェント•ハワードとは「ウィル」「トム」と呼び合う程に距離が近くなっている。 彼の妻とは知り合いだった事や、カイトの為にWIAにはしっかりパイプを繋ごうと動いていたからだ。 「長官や君からの頼みだからね」 「感謝してるよ!エージェント•ワイルドは知ってるな?こっちは、ネオヒューマンズのアイスマンだ」 「よろしく」 彼は無表情のまま「よろしく」と一言だけ言うとすぐに席に着いた。 青白い顔に鋭い目つき、なんだか陰気な男だ。 「中国では北京支部を経由してから預言者の居る山東省(さんとうしょう)の煙台市(えんたいし)へ向かう。移動も含めて6日程の予定だ」 「長官は?」 「山東省で合流する」 「ok」 「詳細はこちらで話そう」 奥の席に案内された。 僕の役目は預言者と呼ばれる未来を見るネオヒューマンズの頭の中を覗く事らしい。 長官は預言者を完全には信用していない様だ。 それにしても、未来を見る預言者までこの世界に居るのかと驚く。 WIAと関わる様になって、自分の様に特殊な能力者が沢山居る事を知った。 今までよく世間にバレなかったな。 まあ、知られてしまえば我々の様な能力者は迫害に遭うのは目に見えている。 人間とは自分と違うものを嫌悪するものだ。 未知なるもの、得体の知れないものは徹底的に排除されるのは分かりきっている。 カイトとの穏やかな日常を守るためにも、今はWIAとは友好関係を築いて行く時だろう。

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