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第25話(マイク)

自宅の1階にある花屋spruceの開店準備を始める。 これでも小さいながらも、マンハッタンで自分の店を持って順調に経営しているんだ。 まあ、最初は苦労したよ。 俺がこんな立地で上手くやって行けてるのはホテルや式場、病院なんかのホールに飾るフラワーアレンジメントを定期的に任されているって事も大きい。 実は大学時代にいくつかのフラワーアレンジメントのコンクールで入賞経験がある。 そして、俺は32歳にして再チャレンジを奮起したんだ。 スティーブにプロポーズされて思ったんだ。   俺の存在はスティーブの足枷になってるんじゃないのか? 離れるべきなのか真剣に考えたけど、やっぱりスティーブを手放せなかった。 でも、スティーブのプロポーズにすぐ答えが出せなかった。 だって今後、2人で生きて行くなら、俺だってスティーブを支えられる様にならないと対等なパートナーなんて言えないだろ? だから、俺は俺のやり方で地盤固めしておきたかった。 世界は救えないけど。 俺は日常の細やかな癒しを与えるフローリストとして生きて行きたい。 だからフラワーアレンジメントのコンクールで、もう一度入賞してフローリストとしての確固たる地盤を築きたい。 正直に言うともう10年近くここで商売してると、段々慣れや安定ってもんを知っちゃって。 上昇志向とか、ガツガツした経営努力とかと縁遠くなってたのも事実。 実際にマンハッタンなんてオシャレな花屋がどんどん開業するし、アレンジメントの流行だってある。 「時代に付いてくのが精一杯だったけど、、、もっと自分の力を試したい」 予選の写真と経歴審査は通過してる。 本選は6日後のクリスマスイブ。 絶対に優勝してみせる。 ここ最近、生花、クレイ、アーティフィシャル、ブーケ、カルトナージュ、テーブルと一通り再勉強してきた。 有難い事に、マンハッタンは流行と芸術の最先端だ。街中のウィンドウディスプレイ、美術館巡り、アーティストの展示会なんかも気軽に回れて自分の感性を刺激してくれる。 俺は俺の世界で戦う。 花と美と癒しの世界で。 優勝してスティーブの手を必ず掴んでみせる。

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