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第26話(スティーブ)
「你们好!长时间的旅行辛苦了」
久々に訪れた北京支部の広々した駐機場にジェットを停泊させタラップを降りると数人の中国人エージェントが待ち構えていた。
「您来了。这边请。This way, please.私はチェン。中国北京支部の支部長です」
長い黒髪をひとつに縛り、穏やかな目をした40代ぐらいの男が、拳を左手の平につけ中国式の挨拶で頭を下げた。
「エージェント·チェン!お会い出来て嬉しいよ」
ハワード支部長は嬉しそうだ。2人は旧知の仲のようだ。
「こちらはネオヒューマンズのチーム北京ブラックの神龍。それから紅隊のエージェント·紅牡丹。預言者の元まで彼らが案内します」
ネオヒューマンズの神龍と呼ばれた男は、砕けた笑顔で迎えてくれた。ニューヨークに長く住んでいたらしく英語も堪能な黒髪に爽やかな笑顔の若い男だ。
そして北京支部の紅隊という女性のみで編成された部隊のエージェント•紅牡丹は一切の笑顔を見せる事なく挨拶さえろくにしなかった。
こちらは長い黒と赤のロングヘアの美女。仮面の様に表情が動かない。
「こちらはニューヨークブラックのエージェント•ワイルド、アイスマン、そして
「トム•コーヴィンさんでしょ?皆んな知ってる」
神龍は嬉しそうだ。
「やあ、どうも」
トムはサングラス越しに微笑んだ。
「挨拶はこれぐらいにして中に入りましょう」
チェン支部長へ案内され北京支部の本部へ入る。
広い駐機場の先は山だ。北京支部は北京郊外にある標高600mほどの小山の山肌にあり本部は山中に隠されている。
冬の北京はニューヨークに負けず寒い。
標高が高い場所にある北京支部は雪と風が音を立てて吹き抜けている。
チェン支部長が山肌に手を翳すと雪と草木に隠されている石造りの双竜を象った岩扉がゆっくり開いた。
中へ一歩入るとワシントン支部やニューヨーク支部と変わらない近代的で無機質な建物だ。
「今日は北京支部で休んで下さい。明日には山東省へ移動します。煙台市に到着してからはジェットは使えません。陸路と海路で移動し神龍と紅牡丹が予言者の所まで案内する予定です。
皆さんには部屋を用意しています」
「おもてなし感謝します」
「私は仕事が残っていますので神龍が部屋までご案内します。では、失礼」
チェン支部長は紅牡丹を連れて仕事へ戻る。
「こちらへ」
神龍に案内され6階フロアに着く。
「こちらを自由に使ってください。何かあれば私に通信機からコード神龍で連絡を」
「あ、待ってくれエージェント•神龍、君は予言者と会った事はあるのかな?」
ハワード支部長が神龍を呼び止めた。
「ありますよ」
神龍は笑顔で答えた。
「預言者には限られた人間しか会えないはずじゃ?」
僕は預言者にはスミス長官や限られた幹部しか会えないと聞いていた。
「私と紅牡丹は別です」
「なぜ?」
「明日になれば分かります」
彼はそう言い残すと足取り軽く去っていった。
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