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第27話(カイト)

さて、今日からトムは北京行き。 WIAの仕事らしい。あんなに俺にはWIAに関わるなって言っときながら、トムは北京までWIAの仕事だって。 俺がガキだからか、トムはあまり仕事の話はしてこない。 「エレナにはあんなに話すのに」 「エレナって?」 「うわ!エージェント•アンダーソンさん」 大学のカフェテリアでランチを食べていると急に現れた。 「で、誰なの?」 相変わらずイケメンっていうか、ディズニープリンスみたいな人だ。 「トムの美人秘書」 「トム•コーヴィンと付き合ってるんだっけ?」 「あー、、、 「隠さなくてもいいよ、僕がブレインと結婚しているのはもう知ってるんでしょ?」 「はい」 「何を悩んでるかは知らないけど、いちいち美女に嫉妬してたら身が持たないよ」 「あの、、、アンダーソンさんとブレイン先生って、、、」 「僕はゲイだけど、ブレインはバイセクシャル」 察しの良い彼はすぐに答えてくれた。 「そうなんですね。俺、男と付き合うのはじめてで、その、まだ、、、」 あー俺、何話してんだ!!恥ずかしくなってきた!! でも相談出来る人とかいねーし! 「君は自分の気持ちと身体を大事にして。タイミングなんて自分で決めたらいい。相手に合わせる必要なんかない」 しっかりと目を見ながら言われた。 そっか、、、俺のタイミング。 そんなタイミングあんのか? 最初はやっぱり痛いのかな? いや、俺が抱かれる側とか限らないか? え、でもトムにしたいかって聞かれたら何か違うかも? 男同士ってそもそもどこまでヤるんだ? 全部の疑問が顔に出てたらしい。 「男同士のセックス、知りたい?教えてあげようか?」 「え?!」 男でもドキドキする様な魅惑的な笑顔。 自分の顔が赤くなってるのが分かる。 「こら!ダメだよ」 ブレイン先生がアンダーソンさんの背後から急に現れた。 「君の可愛い生徒がこんなに困ってるのに?」 「それでもダメ。僕の独占欲知ってるでしょ?喧嘩中だからって余所見しないで。もう行くよ、一緒に来て」 「はいはい」 面倒臭そうな返事をしながらも、ちょっと嬉しそうに照れた顔をしてブレイン先生の後をついて行くアンダーソンさんは、なんだか普段の冷たい人形みたいな彼より可愛く見えた。 俺のタイミングかぁ。 そういうの全然分かんねー。 俺だって男だし、性欲は人並みにある。   ただ、なんていうか、トムと具体的にどうこうなるって考えたら、、、 セックス無しで上手くいってる今の関係が壊れたりしないのか? いや、そもそもトムは俺とヤりたいのか? 今まではモデルや女優とばっかり付き合ってたから多分ゲイじゃないはずだ。 やっぱり俺なんかでいいのか? 結局はそこに行き着く。 トムを信用して無い訳じゃないんだけど。 不安なんだよ。

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