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第28話(トム)
北京支部内の小さな個室に案内されやっと休憩だ。北京はもう夜。すっかり時差ボケだな。
「ハニー」
「はい、トム様」
ハニーのオペレーションマトリックスは本社メインサーバーにあるが、腕時計型のスマートウォッチでダイレクトアクセスし持ち歩く様にしている。
「ニューヨークは今何時かな?」
中国とニューヨークでは13時間程の時差があるはずだ。
「ニューヨークは現在AM9:20です」
「そうか、じゃあウチの寝坊すけはまだ熟睡中だな」
子猫の様に広いベッドの端で背中を丸めて眠るカイトを思い出す。
「じゃあ、いい。次はこの北京支部だ。どのぐらい建物内部をスキャン出来たかな?」
「駐機場を含め全体の約62%です。こちらの6階は既にX線スキャンを終えました」
「ok。出来る限り情報収集しておいてくれ」
僕はまだWIAを信用していない。
情報は常に収集しておく事。
ビジネスの鉄則だ。
そして情報こそ自分を一番守ってくれる。
今や守るものは自分や会社だけじゃない。
カイトだ。何よりも彼を守りたい。
こんなにも他人に心惹かれる事があっただろうか?
今までの恋愛は何だったんだとこの歳で思うなんて。
しかも、男性で19歳。
何度も辞めておけと自分を説得してみたが無理だった。
僕はカイトの為なら何だって出来る。
それがどんなに汚い事でも。
どんなに危険な事でも。
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