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第29話(マイク)

「こんなモンかな」 今日は入荷した花を整理したり、観葉植物達の手入れしたりとバタバタしていた。 この時期はプレゼント用のミニブーケやクリスマス定番のポインセチアも売れ行きは順調だ。 閉店時間になったので、いつもより早目に店を閉めて、二階の自宅へ上がる。 今日は怪我したブライアンが居るからね。 鍵を開けてリビングへ行くとソファーにブライアンが座っていた。 昼間に何度か様子を見に来た時は、ずっと眠っていたから心配していた。 「横になってなくて大丈夫?ベッド使う?」 「お前と一緒ならベッドで寝る」 「いや、ベッドは貸すけど俺はソファーで寝るから」 「いいだろ、怪我人なんだし何も出来ねーよ」 「そういう問題じゃない」 「じゃあ、どういう問題?」 急に腕をグッと引っ張られた。 「うわ、ちょっと!傷口開くよ、危ない!離せ!」 「スティーブが問題?」 「当たり前だろ」 「まだ別れねーの?」 「まだじゃない、別れない」 「俺を選べよ」 「選ばない」 ブライアンが俺を口説いてくるのは冗談かと思ってたけど、本気ならキチンと断るべきだよな。 「俺はスティーブと結婚する」 そうキッパリ言うとブライアンは驚いた顔をした後に痛そうな顔をした。 「重症の俺によく言ったな」 「ご、ごめん」 気不味い沈黙。 ブライアンが本気なら、断るべきだろうけど、確かに重症を負って傷ついた彼に追い討ちをかけるのは酷だったかも。 「本当にごめん、こんな時にこんな言い方」 傷つけたい訳じゃない。ブライアンとはまだ短い付き合いだけど、嫌いじゃない。 スティーブとは違う意味で、ブライアンに好感を持っているのは事実だし。 「お前までそんな顔するなよ」 ブライアンは優しい。 というか、俺に甘いのかも。 「俺、最低だ。ごめん」 「じゃあ、心身共に傷ついた俺を今日だけは慰めてくれ」 ブライアンが真剣な目で訴える。 「え?」 「キス、お前からして」 「無理だよ」 俺はスティーブと結婚する。 無理だ。ブライアンとキスなんて出来ない。 「これで最後だ」 出来ない。 「お前を諦めるから」 出来ない。 「お前を愛してる」 頬にゴツゴツしたブライアンの大きな手が触れる。 「俺にお前を諦めさせてくれ」 いつも強気なブライアンの声が小さく震えてる。 「マイク、、、頼む、、、、」 ブライアンの唇はいつもよりも冷たく感じた。 そっと触れただけの唇だったけど、ブライアンの大きな手は離してくれなかった。 深いキス。頬が触れる感触。ブライアンの息遣い。絡まる舌。 スティーブじゃない肌の匂い。 今までの悪戯みたいなキスとは全然違う。 「あっ、ブライ、、、アン」 「愛してる」 激しく何度も角度を変えて唇を吸われる。 俺は怪我をしているブライアンを突き放せなかった。 「マイク愛してる」 これが最後のキス。

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