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とある負傷兵の独り言1

デルタフォースに居た頃、ソマリアやアフガニスタンでは散々地獄を潜り抜けてきた。 デルタフォースは、第1特殊部隊デルタ作戦分遣隊の通称であり、主に対テロ作戦を遂行するアメリカ陸軍の特殊部隊だ。 そして8年前、イラクでの任務中に敵に捕まった。何日も拷問を受け死にかけていた俺を救出したのはデルタでもネイビーシールズでも、アメリカ空軍空挺部隊でもなかった。  WIAという特務機関のエージェントだった。 俺は左足に重傷を負っていた。 救出されたが高熱を出し、ニューヨークにある州立セントジョン•メディカルセンターへ移送された。 「エリソンさん、ガーゼと包帯交換しますね」 恰幅の良い担当ナースのデイジーは手際よく傷の消毒を済ませると包帯を巻き直す。 俺は他人と簡単な会話をする気力も無かった。 イラクで受けた拷問は自分が思う以上に、身体より精神面に深い影響を受けていたのかもしれない。 デイジーには感謝しているけれど、俺はぼんやり外を眺めていた。 平和だ。 突然、敵の襲撃もない。 爆撃音もない。 悲鳴もない。 血の匂いも、人間の腐臭もない。 自分の居た世界とは別世界にいる気分だ。 「ああ、そうだ!あなたは好きか分からないけどお花を貰ったのよ!持って来るわね!少しでも気分が良くなると良いんだけど」 デイジーは部屋を出て数分で戻ってきた。 「見て!」 鮮やかな黄色、ピンク、オレンジ、グリーン。 咲き乱れる花、爽やかな甘い香り。 俺は思わず花に触れた。 「花、好きなのね!」 好き? 花の名前なんか知らない。 好きなのかもわからない。 「ボランティアで毎週花を届けてくださる方がいるの!ここに飾るわね。また来週新しいのを持って来てあげる」 デイジーは嬉しそうに病室を出て行った。 俺はこの病院に来て初めて自分からモノに触れた。 この可憐な黄色い花は何と言うんだろうか? 「オンシジウム。その花の名前」 突然、病室の入り口から若い男が顔を出した。 「また、来週、花を持って来るよ」 その男は大きな花桶を抱えていた。 鮮やかに咲く花と、男の笑顔が俺の目に光を灯した。 それが俺とマイクの出合い。 ジェイク•エリソン。 誰にも明かせない俺の本当の名前だ。 ブライアン•フォスターを名乗るのはこの数ヶ月後になる。

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