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第31話(カイト)
「カイト!ブレイン先生達と何話してたん?」
大量の食べ物を持ってイチがカフェテリアに現れた。
イチは体内の発光体を維持するのに相当なカロリーを消費するらしく細い身体で人の3倍は食べる。
「別に、挨拶しただけ」
イチにはまだトムと付き合ってる事、話せてないから誤魔化した。流石にあの会話は言えないだろ。
「そか。あの2人仲直りしてるん?」
「まだ喧嘩中みたいだけどあの2人なら大丈夫だよ」
いつも人形の様なアンダーソンさん。ブレイン先生の前だと急に子供っぽくなる。きっと信頼しているから喧嘩だってできるんだろう。
「確かにおしどり夫婦って感じや」
羨ましい。
トムと俺にはまだまだ距離がある気がしてる。
同じベッドで隣に毎晩眠るのに。
たまにトムを遠くに感じる。
セックスすれば、この距離も縮まるのか?
まあ、童貞の俺には分かる訳ないか。
そもそも、俺たちには圧倒的な人生経験の差がある。
多分、トムと俺には見えてる世界が違うんだろうな。
俺はつい先月までは普通の学生だった。
それがトムと出会ってから人生が一気に変わってしまった。
男性、、、しかも大富豪で有名人で年上の男性との恋愛、自分がネオヒューマンズだって事。
今の状況に適応するのが精一杯なんだ。
「なあなあ、それより!来週のニューヨーク支部研修!チームブラックや他のネオヒューマンズのエージェントに会えるらしいで!」
「そうなの?」
どこ情報なのか、ネタ元は明かさないけどイチはWIAの情報通だ。
「ついに憧れのエージェント•ワイルドに会えるかも!!」
イチは嬉しそうに目を輝かせている。
「会えるといいな」
この時、俺たちはまだ知らない。
ニューヨーク支部研修が、大事件に発展する事を。
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