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とある負傷兵の独り言2
「このピンク色の花はアスター」
聞いても無いのに解説しながら、病室の花瓶に花を飾っていく。
毎週月曜日にこの男は来る。
病院に花を寄付している花屋らしい。
「咲き終わりだから、この子の寿命も後二、三日ぐらいだと思うけど少しでも君と過ごせたら嬉しいと思う」
何を言ってるんだ?
花が俺と過ごせて嬉しい?
バカなのか頭の中までお花畑か?
「あ、今バカにしただろ!花や植物も心が伝わるんだぞ」
俺が返事をしなくても気にせず、いつもこの男は勝手に喋ってる。
「大事にしてあげて。アスターの花言葉は【甘い夢】。今日はきっといい夢見れるよ」
花屋の男が笑う。
何故か病室が明るくなった気がした。
「ジェイク、また来週」
男が出ていった後、アスターというピンクの花を眺めた。
鮮やかなピンク。
甘い香。
その日の夜は戦場の夢を見なかった。
血の匂いも爆撃の音も聞こえない。
甘い花の香り。
明るい公園?
そこには笑う花屋の男が居た。
何故か俺は凄く安心していて、久しぶりに朝までぐっすり眠った。
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