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第38話(スティーブ)
時空ポケット、、、不思議な空間だ。
僕には、まだまだ知らされていない事が沢山あるらしい。
極彩色の空間に浮かぶ建物の中へと案内された。
入り口から左右に長い石造りの廊下がある。
右へ進むと大きな部屋に繋がっていた。
「こちらです」
先頭に立って案内してくれたのはエージェント•神龍だ。彼はここによく来るのだろうか?
「流石に緊張するな」
ハワード支部長からは期待と緊張が滲み出ている。
部屋の中に入るとお香の様な匂いが漂っている。
古い木製の板間はかなり広く薄暗い。
等間隔に壁際に灯された灯籠。部屋の最奥に人影が見える。
「やっと来た」
「すまない、待たせたなルカ」
長官がルカと呼んだ預言者は若い男だ。
しかも金髪碧眼、少し長めの髪、白い肌、細身の美男子。目尻が少し下がっていて泣き黒子がある。
僕には見覚えがあった。
「ルカ•アンダーソン?」
「まさか、君が預言者?!」
ハワード支部長も驚いている。
「ハワード支部長とエージェント•ワイルド、それにアイスマンはルカとは顔見知りだな」
「はい、ワシントン本部に居た時ですが、僕とアイスマンはルカと任務で一度会ってます」
「ルカ、まさか君だったなんて、、、」
ハワード支部長は驚きを通り越してショックを受けている様子だ。
確かルカはワシントン本部でスミス長官が直属で指揮していた少数部隊のワシントンCチームに居たはずだ。
「久しぶり、エージェント•ワイルド、アイスマン」
「君が預言者だったのか」
「秘密にしててごめん。父さん達以外には話しちゃいけない決まりだったんだ」
ルカの父親は確かネオヒューマンズのブレイン•アンダーソンと夫のカート•アンダーソン。2人は現役を引退してワシントン大学のネオヒューマンズクラスで働いている。この夫夫がルカを幼い時に養子に引き取っていたはずだ。
「預言者はルカだ。普段はワシントン本部で私が保護している」
「なぜ、わざわざこんな所まで呼び出したんですか?ルカならワシントン本部で会えるでしょ?」
「敵を欺くなら味方から、だよ。
ルカは未来を見るネオヒューマンズ。この能力はあらゆる組織に狙われる可能性が高い貴重な力だ。ルカの父親である人を操るブレイン•アンダーソンも能力の特性上、多方面からずっと狙われていた。アンダーソン家からの頼みでルカの正体は極秘中の極秘にしていた。
【預言者は中国に居て厳重に守られている】と皆に信じさせていれば、ワシントンに居るルカには気付かれにくいだろ?」
不敵に笑う長官は頭が切れる。そして策士だ。
「それに今日は君らに無駄足を踏ませたわけじゃ無い。わざわざ中国まで呼び寄せたのはここからが本題だからだ」
「どういう事です?マイクの預言について話は聞けるんですか?」
「ああ、そうだ。だから彼に同行して貰った。トム」
後ろで黙って話を聞いていたトム•コーヴィンは名指しされて驚いた様に顔を上げた。
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