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第34話

 ユーリウスの住んでいる別宅に着いてすぐ、ユーリウスに抱き上げられて、アルバラはベッドへと寝かされた。  周囲には誰もいない。外には護衛が控えているのだろうけれど、室内はあまりにも静かで、ユーリウスとそんな場所で二人きりという現実に、アルバラはぞわぞわと嫌悪感を覚える。  ここはどこだろう。アルバラは室内を見渡すけれど、当然ながら見覚えはない。  ユーリウスは反乱軍を立ち上げてから、王宮では暮らしていないと聞いた。ここがこれまでユーリウスが生活していた場所であるのなら、きっと誰からも隠されているに違いない。 「ああ、アルバラ……ようやく私の手の中に……」  アルバラをぎゅうと優しく抱きしめて、心底甘い声を出す。  押し倒された体勢では逃げ場もない。けれど背中に手を回すこともできなくて、アルバラはユーリウスの腕の中で硬直していた。 「どこにも、何もされていない? あいつは酷い男だね。きみの細い首を思いきり絞めるなんて……」  首の跡にキスを落として、べろりと舌を這わせる。ここには、それを止めてくれるアシュレイはもう居ない。アルバラは堪えるようにぎゅっと目を閉じていた。 「……ああ、我慢ができないな。時間がないのに……どうしようか」  少し体を持ち上げたユーリウスは、例のうっとりとした瞳でアルバラを見つめていた。  アルバラの嫌いな目だ。この目をしている時のユーリウスに、いい思い出はない。  ユーリウスが顔を近づけると、アルバラは反射的に微かに避けた。しかし逃げられるわけもなく、頬を捕まえられて固定されると、強引に唇が重なる。  頬を掴まれて、無理やり口を開かされた。その隙間からぬるりと舌が進入して、アルバラはようやく抵抗を思い出す。  抵抗しても無駄だ。逃げられるわけがない。救いなんかない。分かっているから諦めていたけれど、無駄だと分かっていても耐えられなかった。 「ん……! ゃ、あっ……!」  容赦無く口腔を蹂躙するユーリウスに、アルバラの抵抗は通じない。  蠢く舌が、隅々までアルバラを犯す。唾液のすべてを舐めとられて、淫猥な音を聞かされていた。 「は、ぁあ、美味しい……アルバラ……」  夢中になっているのか、ユーリウスの動きは止まらない。アルバラのシャツを強く引き裂くと、さらけ出されたそこを見ることもなく、すぐに手のひらで感触を味わっていた。  滑らかな肌だ。アルバラは白いから、胸の突起だけはピンクで目立つ。けれどキスはやめたくないのか、やはり体を見つめることもなく、ユーリウスは指先だけで突起をこねて遊んでいた。  ずっと体を撫でられながら、口腔を蹂躙され続ける。  そんな状況に涙が溢れて、次にはぎくりと体が固まった。 「ほら、アルバラ……分かるかい? 私のものが、きみのナカに入りたいと猛っている」  アルバラの腿に押し付けられたのは、ユーリウスの膨張したそれだった。  ユーリウスの呼吸は荒く、アルバラの腿に腰を振って擦り付ける。熱のこもった目でアルバラを見下ろすと、腰を揺らしながら顔を近づけて、ふたたび唇が重なった。  唇の隙間から、ユーリウスの荒い呼吸が漏れていた。顔を背けてやりたいのに、固定されて動けない。強引に口腔を開かれる感覚に、アルバラは涙が溢れてきた。  ——だけど、ルークは最初からこうなることを望んでいた。  だってルークは、アルバラをユーリウスに返す条件をつけて交渉をすると言っていたのだ。いずれはルークに返されてこうなっていた。遅いか早いかの違いである。  目を閉じれば、まぶたの裏にルークが浮かんだ。  しかしその瞳には憎悪が滲んでいて、すぐに現実に引き戻される。  せめて最後は綺麗な思い出でありたかったのに。  こんなことになるのなら、ユノのことを「忘れたい」なんて思わなければ良かった。  (正直に話せていたら、何かが違ったかもしれない)  現実逃避に思考を飛ばしていると、ユーリウスの手がアルバラの尻に触れてはたと意識が集中した。スラックス越しだ。それでもその動きが艶かしくて、逃げ出したくてたまらない。 「っ、や……!」 「大丈夫だよ、私はアルバラに乱暴はしないからね。大丈夫だから」 「い、や! やめっ……」  アルバラのスラックスにユーリウスの手が引っかかった時、コンコンと部屋をノックする音が響いた。 「……取り込み中だ、後にしてくれ」 「緊急です。王宮に攻め入っている兵士から連絡がありました。ルーク・グレイルが王国軍並びに反乱軍を制圧したと」 「…………何?」  ユーリウスは眉を寄せて、ようやく体を持ち上げた。 「……ルーク・グレイルが? なぜ王宮にいる?」 「不明です。至急王宮へ向かってください」  少しばかり考える仕草を見せたユーリウスだったが、ルークの行動がやはり気になったのかすぐに立ち上がった。もちろんアルバラを連れることも忘れない。アルバラを一人置いて行って逃げ出されるなんて、そんなヘマは犯したくはないのだろう。 「アルバラ、きみも一緒に行こう。久しぶりにイレーネ王妃とも会えるよ」 「……お母様……?」  ユーリウスがいつもの笑みで手を差し出す。けれどそれがどこか恐ろしいものに思えて、アルバラは手を取ることなく立ち上がった。今はあまり目も合わせたくない。アルバラの態度はあからさまだったが、ユーリウスはそれさえも愛らしいのかにこにこと上機嫌に見守るばかりである。

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