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男の子を好きになったら・・・ダメなのかな⑨

 小学校六年生と中学校一年生。キスシーンは見たことがあっても、実際のところどうやるかなんか分かりません。  ただ唇を合わせるだけの行為だったのですが、しかし私のどきどきは最高潮になっていました。 「ど、どう?」  ツカサにそう聞いてみます。 「なんか、いい」  そう言って、ツカサも照れていました。  きっと、お互いそれで満足してしまったのかもしれません。二人ともそれで寝ることにしました。  次の日。もう林間学校も最終日。朝に野外でピクニックを行った後、施設に戻って解散となりました。もちろんその間も、ずっとツカサと一緒でした。  親が迎えに来て、そしてお別れの時間。私たちは笑顔で、あいさつを交わしました。  でも、心の中はさみしさでいっぱいです。ツカサと離れ離れになること、そしてもうひとつ、果たして来年もこうやって会えるのかという不安。  でも、家は離れていて、普段会えるような距離ではありません。私は日常へと戻り、学校の友人たちと過ごす日々を送りました。 ※  私は、中学校から男子校に通っていました。普段会うことのできる女性は、理科助手の人だけだったでしょうか。それ以外の教師は皆男性でした。  ・・・ええ、私は理科室によく行って、理科助手の人と話をしていました。このとおり、どこまでも「女好き」な男の子だったのです。  実際、学校の友人を見ても、誰一人、「性の対象」としてみることはできませんでした。見ようともしていませんでしたしね。  にもかかわらず、ツカサだけは、私は性の対象とみていたのです。それがなぜなのか、今でもわかりません。  冬が過ぎ、中学二年生になり、部活動をしながら過ごしていきます。そしてまた、夏がやってきました。  その年もまた、私は林間学校に参加しました。もちろん、ツカサに会うために。ただそれだけが、私が林間学校に参加する理由になっていました。  一年経ちましたが、私の気持ちは変わっていなかったのです。  親に送られて、施設にやってきました。でも、ツカサも来るのか、ツカサは私のことをどう思っているのか、ただただ不安だったのを覚えています。  仲良くなった何人かと久しぶりに顔を合わせ、あいさつをします。そして、ツカサもまた、その年、林間学校にやってきたのです。 「ひさしぶり!」  ツカサとの久しぶりの挨拶と会話。中学一年生になり、少しだけ大人になっていましたが、ツカサは一年前と変わらず、明るく元気ですらっとした体つきが印象的な、美少年でした。  私たちは、久しぶりにあったとは思えないくらいすぐに、また二人で行動し始めました。おしゃべりも、相撲やプロレスごっこも、前の年と同じ。食事も活動もほとんどの時間、いっしょでした。違っていたのはツカサの背が少し高くなっていたことでしょうか。  その年は、参加者が前よりもずいぶん増えていました。評判になっていたのでしょう。女の子も結構参加していました。  中には、男の子が気になる女の子もいるようす。その視線の多くは、ツカサに送られるものでした。  ツカサだって男の子。女の子に興味があるはずです。それにツカサも中学生になってましたから、前のような『秘め事』はもうないのかもしれないと、私は少し残念に思っていました。  でも、一緒に遊べるだけで楽しかったのも事実。昼と夜の活動を終え、就寝時間になると、私とツカサはまた以前のように隣同士の布団を選びました。  初日は、久しぶりに会った仲良しグループで談笑をしました。オブザーバーの人に怒られても、しばらく静かにした後、また集まってひそひそ話です。  結局、ツカサと二人きりになるチャンスはなく、夜もかなり遅くなったので、そのまま眠りにつきました。  二日目も昼間は同じような感じでした。そして夜。前夜、随分と騒がしくしたこともあって、オブザーバーの人に随分と静かにするようくぎを刺されてしまいました。  仕方なく、その夜はグループで談笑することは控え、皆、早めに寝ることにしたのです。  電気が消され、男の子たちが寝る大部屋が静けさに包まれます。  と、横を見ると、薄明りの中、ツカサが私の方を見ていました。顔には少しの笑みが浮かんでいます。 「来る?」  私がそうささやくと、ツカサは「うん」と返事をし、そして去年と同じように、私の布団にもぐりこんできたのです……  

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