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思わぬ告白③
高校時代、学内のヒエラルキーの最上位に君臨していたといっても、早乙女くんが弱者に対してこういった嫌がらせのような真似をするイメージは無かった。
むしろ苛めている人間に気付いたら、そんなダサい事はもうやめろと、底辺の僕らに代わって諌めてくれるような人だった。
だからそんな彼に、少しだけ憧れてすらいたというのに。
……僕はもしやストレス解消のための捌け口として、こんな性的嫌がらせを受けているのだろうか?
それを理不尽に思いながらも、体は彼の与える刺激をもっと、もっとと欲しがり、求めているのを感じる。
そんなはしたない自分が情けないし、悔しい。
なのにふと見上げると、早乙女くんの方が何故か、哀しそうな顔をして僕の事をじっと見下ろしていた。
それに驚き、じっと早乙女くんの綺麗な顔を見つめると、理由は分からないけれど彼は傷付いた様子で静かに微笑み、聞いた。
「ごめん。大晴が反応してくれるのが嬉しくて、つい調子乗った。
……素面だと俺に触られんの、そんなに嫌だった?」
嫌か、嫌じゃないかと聞かれたら。
……そりゃあ野郎相手にこんな事をされているだなんて、嫌に決まっている。
なのにいつも自信に満ち溢れていた彼のそんな表情を見たら、なんて答えるのが正解か途端に分からなくなってしまった。
「ごめんな、大晴。
……ずっと好きだったお前と付き合える事になって俺、舞い上がっちゃってたかも」
どうしよう?……もはや何処からどう突っ込んだら良いか、本気で分からないんだが。
謝罪の、言葉。これはまぁ、今されている事を思えば理解は出来る。
しかし『ずっと好きだったお前』と、『付き合える事になって』、『舞い上がっている』という3つが、どうしても脳内でうまく結び付かない。
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