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脅迫①
「アイツいったい、どういうつもりだよ?」
用を足し終わり、男子トイレ内の鏡の鏡の前に立ったまま、ひとりぎゅっと唇を噛み締める僕。
するとそのタイミングで、早乙女くんが入ってきた。
「どういうつもりも、何も。
大晴が、可愛過ぎるのが悪い」
ちゅっ、と音を立て、首筋に口付けられた。
「ひゃ……!」
こんな場所でまでそんな真似をされると思わなかったモノだから、つい変な声が出てしまった。
すると彼はククッと楽しそうに笑い、耳元で囁いた。
「そもそもの話。なんで大晴は、自分がモテないだなんて思い込んでたんだよ?
……本当にモテないヤツはな、そんな簡単に『一夜の相手』なんか、見付けられないって」
そういうものなのだろうか……?
だけど確かに一人でバーなどで自棄になり飲んだくれていた際に、声をかけて来てくれるのはいつだって女の子達の方からだった。
「……なるほど」
鏡に写る、自分の顔をじっと見つめてみる。
女の子みたいな顔をしているのがずっとコンプレックスだったけれど、そういうのが好きな子も意外と多いのかもしれない。
「だったらこれからは、史織の事なんか忘れて遊びまくってやる!」
まだ酔っていた事もあり、鼻息荒く宣言した。
それを聞き、鏡に写る早乙女くんの眉間には深いシワが刻まれた。
「はぁ!?お前……何を堂々と、浮気宣言してんの?
マジで、ふざっけんな!
お前は俺と、付き合ってるだろうが!」
「付き合ってないよ、一夜の過ちだろ?
楽しかったね、気持ち良かったよ。
ありがとうございました!」
わざと早口で煽るみたいにそう言うと、早乙女くんは一瞬だけ不愉快そうに口元を歪めた後、今度はにっこりと不気味なくらい綺麗に微笑んだ。
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