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脅迫②
「ふーん。なら俺はお前に、弄ばれたって事?
あんなに気持ち良さそうにあんあん喘いで、遼河くん大好きってすがり付いて来た癖に?」
スーツのポケットから、取り出されたスマートフォン。
その画面に写し出されたのは、初めてのあの夜に撮られたと思われる、僕の痴態だった。
「!?」
あまりの衝撃映像に意識が遠退きかけたせいで、足元がグラリとふらついた。
幸か不幸か後ろから抱き支えられたから、転倒はせずに済んだけれど。
「こんな形で、この動画を使うつもりは無かったんだけどな。
……でもさすがに今のは、ちょっとカチンと来たわ」
爽やかな笑みを浮かべたまま、ナチュラルに脅迫を続ける早乙女くん。
その言葉の意味を理解した瞬間、一瞬のうちに血の気が引いた。
「消してよ、早乙女くん。
今すぐ、消せ!」
腕を伸ばし、彼からスマホを奪い取ろうとしたけれど、身長差があり過ぎてかすりもしない。
やや既視感のある展開だが、それはこの際気にしない。
「やだよ。だって可愛い俺の大晴の、処女喪失の瞬間だぜ?
アハハ、見てみろよ。
初めてで、これとか。ヤバ過ぎ!
どんだけ淫乱なんだよ?お前」
スマートフォンの、画面の中。
さすがに音声はオフられているが、びっくりするぐらい乱れに乱れ、もっともっととねだっているらしき僕の姿は確かに、彼の言うように淫乱以外の何者でも無かった。
そしてこの最悪なタイミングで、あまりにも戻るのが遅い僕達を心配をした知之が外から声を掛けた。
「おーい、大丈夫か?
大晴、かなり酔ってたみたいだけど……」
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