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脅迫③
その声に慌て、なんでもないと返事をしようとしたところで早乙女くんは、大きく開いた僕の口に指を突っ込んできた。
そのため言葉を発する事が出来ず、涙目になりながらギロリとただ彼の顔を睨んだ。
だけど早乙女くんは楽しそうにククッと笑い、そのままゆっくりその指先を僕の唇から出し入れした。
それは擬似的な性行為を思わせ、またしても下腹部がずくんと疼く。
まるでこれでは僕が、期待しているみたいじゃないか。
……本当に、サイアク過ぎる。
その間にスマホの動画は停止されたけれど、あんなものを保管されているというだけで落ち着かない。
どうにかして早く、消させないと。
「うーん、めちゃくちゃ酔ってるみたい。
仕方がないから、今夜は俺がコイツを家まで送ってくわ」
僕があれこれ考えている間に、勝手に早乙女くんが返事をしてしまった。
その発言にぎょっとし、何とか彼の魔手を振り払って逃れると、早口で答えた。
「わざわざ送って貰わなくても、大丈夫!
でも確かに、かなり酔ってはいるかもだから、そろそろ僕は帰ろうかな」
フッ、と小馬鹿にしたような表情で嗤う早乙女くん。
しかしそんな仕草すらも色気が溢れ、格好いいものだから理不尽ながらも余計に腹が立った。
その時再び強く背後から抱かれ、うなじに歯を立てられた。
予想外の刺激に、びくんと大きく揺れる体。
「帰れると、思ってんの?
……今夜もまた、長い夜になりそうだな」
僕にだけ聞こえるくらいの小さな声でそう言うと、彼はスマートフォンを僕の目の前でプラプラ揺らした。
そしてそのまま今度は意地悪な言葉とは裏腹に、優しく僕の唇にキスをすると、濃灰色の目をした猛獣は楽しそうに笑った。
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