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慌ただしい朝①
「おはよう、大晴。そろそろ起きた方が、良んじゃね?
今日はお前、仕事だよな?」
乱暴に、剥がされた毛布。
寝起きは良い方なはずなのに、あれだけ運動 を強制的にさせられた体は疲れ果て、貪欲に睡眠を貪ってしまったらしい。
壁に掛けられた時計を確認すると、時刻は朝の6時半。
うん。今からなら、家に戻ってもギリ間に合う!
「おはよう、早乙女くん。
うん、当然仕事だよ。
誰かさんが寝させてくれなかったおかげで、割とギリギリになっちゃったけどね」
ムクリと起き上がり、にっこりと微笑んで嫌味を言ってやったけれど、彼はけろりとした様子でフフンと笑った。
「早乙女くんじゃなく、遼河な。
俺は10時までに着けば大丈夫だから、家まで送ってやるよ。
さすがに私服じゃ、まずいだろうし」
当たり前だ。スーツを着ずに出社するとか、あり得ない。
「ありがとう。それなら、充分間に合う。
助かるよ。……何となく、納得はいかないけどな!」
そこら中に脱ぎ捨てられていた衣類を慌ててかき集めながら、今度はギロリと睨み付けた。
だけど彼は特に気にするでもなく、僕の体を背後から抱き締めた。
「送ってやるからさ、少しは時間に余裕出来るんじゃね?
朝飯、食べてけよ」
僕と彼の関係は、いわゆるセフレ。
そう……セックスもする、オトモダチ。
なのにこれはたぶん、セフレ扱いではなく恋人扱いに近い。
でも、不快じゃない。
だからといってわざわざ、関係性を変えようだなんて自分から言えるほど、彼に気を許したワケではないけれど。
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