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慌ただしい朝②

「ありがとう。でもこの家に、食べる物なんてあるの?」  料理をするイメージなんて全くなかったから、不思議に思い聞いた。 「あるよ。っていうか俺、自炊派だし」  予想外の言葉に、少し驚かされた。  でも考えてみたら、それも当たり前の話だ。  だって僕は彼の事なんて、ほとんど何も知らないのだから。 「へぇ、そうなんだ?……ちょっと、意外」  思わずクスクスと笑うと、彼は一瞬吃驚した様子で瞳を見開き、それからニッと口角を上げた。 「俺さ、割となんでも出来るよ?  苦手な事って、別段ないし。  だからスッゲェお買い得だと、思うけど」  ちゅっ、と首筋に口付けられ、慌てて彼の体を押し退けた。 「ホント、偉そうだし傲慢だよね。  君って、そんなタイプの人間だっけ?」  呆れながらそう言うと、彼はククッと可笑しそうに笑った。 「んー……、たぶん?  性格的には、あんま高校の頃から変わってないと思う」  学内のカースト最上位に君臨しながらも、僕達陰キャにも平等に接してくれた早乙女くん。  まぁしかしこんな性格だと知っていたら、当時の僕なら間違いなく危険人物認定をして、彼の事を全力で避けていたと思うけれど。 「でもお前には少しでも良く見られたくて、良い格好をしようとしてたのかもな。  意味はほとんど、無かったみたいだけど」  それから彼は、僕の顔をじっと見つめた。  そんな風に、見つめられたら……彼の濃灰色の瞳から、目がそらせない。  だけど優しく微笑んで彼はポンポンと、戸惑う僕の頭を撫でた。 「何?その、キョトン顔。  さて……そろそろマジで起きないと、飯を食う時間なくなるぞ?  それとも朝から、もう一発ヤる?」

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