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慌ただしい朝③
その言葉に驚き、慌ててベッドから立ち上がった。
「しない!絶対、しないから!!」
割と強めに拒絶してやったというのに彼はまたククッと笑い、残念とだけ言うと、ベェと舌を出した。
***
「じゃあね、大晴。また、連絡する」
僕を家まで送り届けると、彼は運転席に座ったまま優しく微笑んだ。
日の光の下で、初めて見る彼の姿。
何となく早乙女くんは夜が似合うイメージがあったけれど、まだスーツに着替える前の、ラフな格好も爽やかで格好良い。
とはいえそんな事は、口が裂けても言ってやらないけれど。
「うん、またね。
僕からも、何かあれば連絡する」
社交辞令などではなく、素直に答えた。
なのに彼が不愉快そうに口元を歪めたモノだから、それに驚き聞いた。
「えっと……なんか、気に入らなかった?」
こういうところが、我ながら駄目なんだろうなと密かに苦笑する。
……ホント、人の顔色を窺い過ぎ。
でも早乙女くんは僕のそんな心情には気付かなかったのか、不貞腐れたような顔のまま答えた。
「気に入らない。
何かあればじゃなく、何も無くても連絡して来いよ」
……やっぱりコイツ、犬だ。
その言葉と仕草に、思わずプッと吹き出した。
「分かった。また、連絡するね」
僕よりもずっと大柄な彼に向かい手を伸ばし、ワシワシと頭を撫でた。
「この間から、思ってたんだけどさ。
……お前俺の事、犬かなんかだと勘違いしてないか?」
ますます不機嫌そうに歪む、彼の形の良い唇。
ヤバ。バレてた!
だけどまさかその通りですとも言えず、もう時間がないからと、質問には返事をせずにそのままマンションの自室に向かい駆け出した。
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