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愛だの、恋だの①
「はぁ……。またしても、ヤってしまった」
シャワーを浴び終わり、鏡に向かい髪を渇かそうとしたら、視界に入ってきた無数のキスマーク。
服を着たら見えない場所ばかりではあるものの、さすがにこれはつけ過ぎだろう。
なのに不思議と、嫌ではなくて。
……思わずクスリと、ひとり笑った。
なんで僕の事なんかを好きになったのか、そしてなんであんなにも僕に執着するのか?
不思議で仕方がないけれど、それを徐々に受け入れつつある自分。
しかもあんなにも男らしく、格好いい彼の事を、可愛いと感じるようになるとは。
正直なところ、やっぱりこの感情の名前は分からない。
史織に片想いはしていたけれど、誰かからこんなに想われた事がないから、単にちょっと絆されてしまっただけなのかもしれない。
彼とのセックスは気持ちが良いし、今は深く考えなくてもいいとも言われている。
……その間にジワジワと、距離を詰められている気がしないでもないが。
「まぁ、考えても仕方がない……か。
とりあえず、仕事だ。仕事!」
我にかえり、慌てて身支度を整えると、気合いを入れ直すため、両手で頬をパンと|叩《はた》いた。
***
「あれ?佐瀬さん、今日はギリギリなんですね。……珍しい」
クスクスと笑いながら、今年入社したばかりの日和 さんが言った。
同じ名字の鈴木さんが総務部内に二人いるから、後から入社した彼女の方を皆、名前で呼んでいる。
しかし身内以外で僕が下の名で呼ぶ女の子なんていうのはこれまで史織だけだったから、最初の頃はいい年をして少しだけドキドキしてしまったなどというのは、気持ち悪がられそうだし本人には絶対に内緒だ。
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