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ココロの記憶③
『なぁ!佐瀬も、そう思うだろ?』
突如会話を振られ、戸惑う僕。
だけど例え嘘でもその考えに賛同するのは嫌だったし、だからといって彼らの言葉を否定する勇気も無かったから、ただ曖昧に笑ってやり過ごそうとした。
『だよなぁ!やっぱお前も、ムカつくよな?』
勝手に同調した事にされ、不快な気持ちが増していく。
そしてその気持ちが、ただ平和に過ごしていたいと願う自分を凌駕して。
……気付くと僕は、笑顔のまま否定の言葉を口にしていた。
『うーん……。僕は、そうは思わないかな?
確かに彼は良い家に生まれて、顔も良くて、運動だって出来る。
だけどそんなのは、彼が望んで選んだ事じゃない。
それに勉強に関しては、努力もしてるんじゃないかな?
……人の事を貶めるような事ばかり言ってる、君達よりもずっと』
思っていた事をすべて言ってから、しまったと思った。
そして中心になって悪口を言っていた男が立ち上がり、僕の机にバンと大きく音を立てて両手をついた瞬間、情けない事に恐怖に体がすくんだ。
『へぇ……佐瀬、お前そういう事言っちゃうんだ?
オタクが、いきってんじゃねぇよ!』
グッと制服のシャツの襟元を掴まれ、無理矢理立ち上がらせられた。
そしてあわや、殴られると思ったその時。
……教室のドアがガラリと開けられ、早乙女くんがにっこりと微笑んで現れた。
『はぁい、ストップ。そこまで。
俺のために、熱くなってくれるのは嬉しいけど。
……男の嫉妬は、見苦しいぞ?』
すると慌ててその男子は、僕から手を離した。
それを見て早乙女くんは、切れ長の目をスッと細め、いつものように明るく軽い口調で、笑顔のまま告げた。
『まぁ俺の事は別に、好きに言えば良いけどさぁ。
また佐瀬に、なんかおかしな真似したら。
……お前ら全員、殺すよ?』
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