61 / 132
僕は、君がいい①
ベッドの、上。
窓から射し込む朝の光の眩しさに目を覚ますと横には、僕の事を腕枕したまま眠る早乙女くんの姿。
睫毛、長いなぁ。
……あと起きてるとこわい時もあるけど、寝顔はちょっと可愛い。
すっかり忘れていた懐かしい夢を見たせいか、それともよく眠ったせいなのか。
不思議と怒りだとか、悲しいといった負の感情は綺麗さっぱり消え失せていた。
とはいえ腰は痛いし、あんなモノ をずっと突っ込まれていたせいで、抜かれた後も異物感が凄いけれど。
手を伸ばし、彼の黒髪にそっと触れてみる。
するとくすぐったそうに彼は体をちょっぴり丸め、僕の事を強く抱き締めた。
夢の中での出来事は、すべて僕と彼の過去の記憶だ。
あの頃の僕は、彼に憧れていて。
……そして彼は以前告白してくれた通り、僕の事を好きだったのだろうと思う。
当時はまるで気が付かなかったけれど、いつだって飄々としていた彼の、異常なまでの僕への執着。
その片鱗は、既にあの頃見えていた。
でも、だから僕はそれがこわくて、逃げ出したんだ。
彼の、想いから。
……僕自身の、気持ちからも。
もぞもぞと体を動かしたかと思うと、彼の瞳がゆっくりと開いた。
そして視界に僕の姿を認めると、早乙女くんは嬉しそうにくしゃりと笑った。
「おはよ、大晴」
まだ寝惚けているらしき様子ではあるものの、当たり前みたいな顔をして、僕にキスをしようとする早乙女くん。
僕はそれを華麗に避けて、わざと冷たい口調で告げた。
「おはよう、早乙女くん。
……お尻の違和感ヤバいし、口もまだすっごくダルいんだけど?」
ともだちにシェアしよう!