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僕は、君がいい②

 じとりと睨み付け、まだ怒っているのだとアピールを試みる。  僕への重過ぎる愛にドン引きしてはいるものの、実際はもう怒ってなんていなかった。  でもここはキチンと、反省させておかねばなるまい。  だって同僚達と飲む度に嫉妬され、あんな目に遭わされるだなんて。  ……そんなの、冗談じゃない!  嬉しそうに笑っていたはずの彼の表情が、見る間に曇る。  やっぱりこういう時の彼は、叱られた大型犬みたいだ。……可愛い。  それを見てつい吹き出しそうになったけれど、慌てて顔を引き締めた。 「ごめん。  でもあんな風にお前に触れるあの女の事が、どうしても許せなかったんだ」  やっぱり嫉妬から来る、凶行だったか。  しかし軽く手に触れられただけで、アレとか。  ……まるで子供みたいな言い訳に、我慢出来ずに今度は思いっきり吹き出してしまった。 「……あとあの子、大晴に名前で呼ばれてたし」  最終的なトリガーは、名前呼びだったらしい。  何故そこに、そんなにもこだわるのだろう?  不思議に思い、聞いてみると、彼は僕から視線をそらし、バツが悪そうに答えた。 「だってお前、俺の事、素面だと絶対に名前で呼ばないじゃん。  ……知之とか、君下の事は呼ぶくせに」  なるほど。確かになんとなく気恥ずかしくて、求められても僕は彼の事を、(かたく)なに早乙女くんと呼び続けた。  しかしそれが彼を、更に不安にさせているのだとしたら。  ……そして名前で呼ぶ事で、その不安を取り去る事が出来るのだとしたら、それはとても価値のある行為なのかもしれない。 「ねぇ、早乙女くん。……いや、遼河くん。  一度しか言わないから、ちゃんと聞いてね?」  彼の頬に両手を添えて、無理矢理視線を合わさせた。

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