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僕は、君がいい③
「昨日の夜、あんな風にめちゃくちゃにされたのは、こわかったし嫌だった。
だけど早乙女くんとするのは、嫌じゃないよ。
あと君以外の人と、したいとも思わない。
するなら、相手は君がいい」
遠回しに、遼河くんは僕にとって、特別な存在なのだと伝えてみる。
とはいえこれが恋愛感情から来るモノなのかは、まだ僕自身相変わらず分からないままだけれど。
「それって、俺とヤるのが好きって事?
……それとも俺が、好きって事?」
敢えて曖昧に、簿かして答えたと言うのに。
真っ直ぐに僕の瞳を見つめたまま、子供みたいに明確な言葉を欲しがる彼に困り果て、自然と吐息が漏れた。
「君とするのは、好き。
ただし大人のオモチャとかを使って、めちゃくちゃにヤられるのはこわいし嫌だ。
それから……君の事が好きかどうかっていう質問に対する答えは、もう少しだけ待って欲しい」
そんな中途半端な返事をしている時点で、たぶん答えはもう出ているのだろうと思う。
だけどこんな風に迷ってしまうのはきっと、僕が自分に自信がないせいだ。
そのため素直に彼の気持ちを受け入れる事も、逆に拒絶して距離を置く事も出来ないでいる。
「あとね、遼河くん。
日和さんを名前で呼んでたのは、同じ部署に、彼女と同じ名字の人がもう一人いるからだよ。
それ以上の意味も、それ以下の意味もない」
クスクスと笑いながらの、種明かし。
びっくり顔のまま固まってしまった彼の唇に、唇を軽く押し当てた。
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