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僕は、君がいい④

 素面の状態で、行為の最中以外では初めての、自発的なキス。  いつも自信に溢れていて、傲慢で意地悪でワガママな彼の耳たぶが、一瞬のうちに朱に染まった。  しかしそんな姿を僕には見せたく無かったのか、彼は僕の体を強く抱き締め、自身の胸元に押し付けた。 「これまでも、もう充分待たされたんだ。  ……だからなるべく早く、答えを聞かせて」  恨みがましい視線を僕に向け、遼河くんは言った。  だから僕はコクリと小さく頷き、彼の頭をそっと撫でた。  ぎゅっとしたまま、頬に頬を擦り付けられる。  それが気持ち的にも体的にもなんだかむず痒くて、プククと笑う僕。  しかし、甘い時間はここまでで。  ……抱き締められる下半身に押し当てられた、熱く硬い異物。  慌てて腰を引こうとしたけれど、逆に更に強く引き寄せられてしまった。 「今日は疲れたから、さすがにもうしたくないんだけど」  被害者である事を、アピールしつつの拒絶。  なのに彼はいつもみたいにニヤリと不敵に口角を上げ、僕の耳元で囁いた。 「そっかぁ。でも、抱くけどな?  だって俺、昨日から全然逝ってねぇし。  不公平だと、お前も思うだろ?」 「知らないよ、そんなの!  ……僕は何も、悪くない」  プイと顔をそらしての、断固拒否。  だけど横を向いたせいで無防備になった耳に、今度はぬるりと舌先が滑り込んできた。 「んっ……!遼河くん......今日は、駄目」  しかし、そんな訴えも虚しく。  彼は楽しそうに僕の上にのし掛かり、やや強引にまた脱がし始めた。 「無理!ホント、駄目!  ……口で、してあげるから」  その言葉に反応し、ピタリと彼の動きが止まる。 「やっぱズルいよ、お前。  ……エロ過ぎんだろ、マジで」     ガクリと脱力し、拗ねたような口調で言われた。

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