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負けられない戦い①
そんな風に、ぼんやりと考えた瞬間。
……不気味なまでに爽やかにキラキラと微笑む、遼河くんと目が合った。
しまった!ヤバい、やらかした!
一瞬とはいえ、僕の事を知之が抱き締めたにも等しいこの状況が地雷となり、どうやら遼河くんの不機嫌スイッチをまたしても押してしまったらしい。
しかしKYの代表選手 知之は、幸か不幸かその事にはまるで気付いておらず、遼河くんの真似をして気持ちの悪いセクシーポーズをしてふざけていた。
***
「んー、何を賭ける?
どうせならなんか面白い、ネタ的なのが良いよなぁ」
知之がヘラヘラと笑いながら、再度余計な提案をしてきた。
しかしこんな状況で、罰ゲームありきなトランプとか。……冗談じゃない。
知之もこの手のカードゲームは強かったはずだが、遼河くんには僕と知之が束になってかかったとしても、勝てる気がしない。
「普通に、遊ぶだけで良いんじゃない?
別に罰ゲームとか、無くても」
危機的状況を回避するため、まだ少し酔ってはいるものの脳をフル稼働させながら言った。
「つまらんヤツめ。……そうだ!
ここは大晴に一皮剥けさせるためにも、負けたヤツは大人のオモチャを買いに、ひとりでおつかいに行くってのはどうだ?」
黙れ、知之!お前もう、ホント頼むから空気を読む事を覚えてくれ!
……そんな罰ゲーム、誰が勝とうが僕には地獄しか待っていない気がする。
バイブが全く気持ちよくなかったワケではないが、僕はどうやら機械的な振動がどうも苦手らしい。
あんなのでエンドレスに攻め続けられるのは、二度とご免被りたい。
と言うか、どうせなら遼河くんのモノで……って、待て!僕。
今考えるべきなのは、こんな事じゃない!
現実逃避していた、その隙に。
……ババ抜き用のトランプが、僕の前にもいつの間にか配られていた。
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