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負けられない戦い③

 途中までは勝てる気がしなかったのに、今残る手元のカードの数は、彼の方が圧倒的に多い。  ……もしかしたら僕、このまま勝てちゃうかも!?  そんな風に、期待したタイミングで。  ……遼河くんはわざとらしく、芝居がかった口調で言った。 「あれ?既に何枚か、揃ってたみたい。  あっぶね……危うく見落として、大晴に負けるところだったわ」 「へ……?」  バラバラとテーブルに投げ捨てられていく、大量のカード。  予想外の展開に驚き、ポカンと口を開けた僕から一枚引くと、彼は手元にあった残りのカードをパラリと天井に向かい放り投げた。  宙を舞う、二枚のキング。  そう……僕の負けなんて、とっくに確定していたのだ。  なのにただ彼に、弄ばれただけだった。からかわれた!  にんまりと、濃灰色の目をした綺麗な悪魔が嗤う。 「大晴。罰ゲーム、頑張ろうな?」  ……本当にコイツ、性格が悪過ぎるだろ!! 「なんだよ?それ。  遼河もそういううっかりミス、やらかす事があるんだな!」  何も分かっていないらしき素直な知之が、可笑しそうにゲラゲラと笑った。  ……そんなワケ、あるか!! 「じゃあ罰ゲームは、大晴に決定って事で!  普通のヤツだとつまんないから、なんか面白そうなオモチャにしようぜ」  瞳をキラキラと輝かせ、知之が言った。  ……そういうところに無邪気な少年のイタズラ心、ホント必要ないから。  楽しそうにスマホを弄りながら、あれでもない、これでもないと、罰ゲームで僕が買いに行くためのアイテムを選ぶふたり。  それを見て不安になり、僕も画面を覗きこもうとしたら、シッシと手で追い払われた。

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